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「私は言いました。『完全に貴女を敵とみなす』って。あの時、ティアナが階段から落ちた時に誰も証言が出来なかった。それに、クラウスが薬漬けになった時も誰も何も言えなかった。それはすべて証拠が何も無かったから」
「証拠なんてありません。私は何もしていませんから」
「本当に?」
「え……?」
「本当に、何もしていませんか?」
真っ直ぐジェシカを見つめるとジェシカは一瞬びくっとした。
「貴女が何かをしようとするとき、貴女は『一人で』やったんですか?大量の寒恋草を入手したり、人払いをすることも?全部?」
「何を言いたいの……?」
「私はとてもそう思えません。だって貴女にそこまでの頭はないじゃないですか」
「は……?」
「言ってることがわかりませんか?簡単に言えば『バカなのにそんな頭のいい事が出来るわけない』ってことです」
私の言葉にジェシカの顔が怒りで赤くなっていく。
それから悔しそうに唇をかみしめた。
「貴女がクラウスを薬漬けに出来たのも研究員の人達を犠牲にしたから。つまり、研究員の人達に聞けば貴女がクラウスに何をしようとしたかなんて簡単にわかります。それに、ティアナを階段から突き落とした時も。いつもは使用人に酷い形で接しているのに、その日はやけに優しかったそうですね?
貴女の計画はバカで単純で、分かりやすいので助かります」
ニコッと笑いかけるとジェシカが持っていた封筒を破った。
それから私をにらみつけた。
「何よ!アンタなんてただのモブのくせに!何!?『天才姫』?そんなの聞いたことない!私はね、かわいいの!この世界に愛されて当然なの!!アンタみたいなモブ、この世界では本当は存在していないんだから!!」
「そうでしょうか?私はこうして存在していますよ」
「だから……!!」
「この国の寒波を予想したのは誰?」
「は……」
「国が壊滅状態になる前に防いだのは?クロスランド王国の危機やラルストン王国の危機を救ったのは?貿易を発展させ、農業を盛んにし、薬を開発したのは一体だあれ?」
「……っ」
「『貴女の知っている世界』では私は存在していなかったのかもしれない。でも、『今ここに貴女が存在する世界』では私の存在は欠かせないものだとは思いませんか?つまり……『ここは貴女の知っている世界』ではないということです」
「え……」
「証拠なんてものは探そうと思えばいくらでも出てくるものなんです。頭のいい人の完全犯罪でも、いつかは人にバレてしまう。それなら、単純バカな貴女の犯罪なんてもっと簡単に見つける事が出来てしまうんです。だから私は警告しました。『クラウスから離れないのであれば強行手段をとる』……手紙にはそう書いていませんでしたか?」
「……」
「ああ、本当に……お前はバカだな」
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