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終始ジェシカは嫌そうな顔をしていたけど、突然笑い出した。
「……簡単な話じゃない。この世界が私の知らない世界なら、私の知っている世界にすればいい」
「何?」
「レイラ・シルヴァには退場してもらおうって話。私の邪魔ばかりする厄介者さえ排除してしまえば私が知っている世界になるでしょ?……さて、天才姫。世界に愛されているのは貴女?私?どっちでしょう」
この子、気づいてないのかな?
完全に『この世界の悪役』は自分自身なのに。
ジェシカは狂ったように笑いながら私に近づいた。
レオが私に駆け寄ろうとした瞬間、私はジェシカに押されて車道に飛び出した。
周りの人が叫ぶ。
座り込む私の目に入ったのは、走ってくる馬車だった。
「お嬢!!」
レオが私の手を引いて歩道に連れ戻す。
間一髪で私は轢かれずに済んだ。
「あぶねー!!」
「何してんですか!お嬢!大怪我するとこでしたよ!?ていうか……ちょっとジェシカとっ捕まえて来ます!!」
「待って、レオ」
「はい!?」
「あの子、『愛されているのは自分か私か』って言ってたよね?それって、この後ジェシカはクラウスとかに私を悪く言うんじゃないかな?」
「だとしても、この状況を見てる人からしたら圧倒的にジェシカが悪いって誰もが言うでしょ!?」
「でもクラウスは見てない。リリク様やグレン様、アルだって今この国に来てるけど、ジェシカはみんなに何かしら私を悪くする内容を言うと思うの。私が怪我しないって確証があったのかも」
「なんで……」
「傍にレオがいたから」
「!!」
「私が怪我をしていないのであれば、自分が私に何かされたっていえば私が悪くなる。私やレオがいくらジェシカを非難しようとも、ジェシカの独壇場になる。……っと、これがあの馬鹿の計画だろう」
「は?」
「だからあの子はバカなんだよ。……もっと後にジェシカを確実に追い出せたらって思ってたんだけど。もういいか」
私は立ち上がるとスカートについた砂を払った。
「断罪の場はクラウスのスピーチの時にする」
「はい?」
「今からリリク様、グレン様、アルを探して事情を伝えるよ」
スタスタ歩き出した私を見てレオはため息をつくと、呆れながらも笑ってくれた。
凱旋パレードが終わり、貴族の人達で招待を受けている人はお城へ集められた。
私とレオがお城へ向かうとマナが慌てて私たちに駆け寄ってきた。
「お嬢様!」
「どうしたの?」
「それが……ジェシカ様が酷い怪我をされて戻られて…。その怪我はレイラお嬢様に突き飛ばされたものだと言われているんです」
「は?お嬢を突き飛ばしたのはジェシカだろ」
「え!?突き飛ばされたんですか!?」
マナは私の手のひらを見ると青ざめた。
「こ、これ……旦那様やケネス様が見たら……っ」
今にも倒れそうなマナの後ろからお父様とお母様、そしてお兄様がやって来た。
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