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「お嬢様」
「わ、分かってるよ。別に『薬試せなくて悲しい』とか考えてないし」
「お嬢様?」
「ティアナ!マナが怖い!」
「マナ、あまりレイラをいじめないであげて」
「承知いたしました」
マナは息をつくと、いつものように私の後ろに控えた。
「お前、一応主だろ?」
「リリク様、いくら主でも使用人が強い場合だってあるんですよ」
「それはお前がイレギュラーなことばかりするからだろう」
「リリク様、味方になってくれると思ってた」
悲しむ私の頭を撫でてくれるティアナ。
ああ、天使。
「君が、痛み止めを開発したの?」
「はい!」
「そうか……。それじゃあ、僕は聞かされていた内容が違うな」
「え……?」
「君はどうして『痛み止め』を知っているの?」
「それは私が開発したからです!」
「僕はレイラがその薬を作っているのを見たんだ。知ってるよね?レイラはこの城の研究員達と薬の開発に日々尽力してくれているって」
「し、知っています。でも……あれは私が発言したことをレイラ様が奪ったにすぎません」
「……どういう事?」
「今までレイラ様が作られた薬は本来すべて私が発案したものです。それをレイラ様が自分の手柄のように殿下にお見せになられていると聞いたとき、私は悲しみで言葉を失いました……」
「そうか。君は、発案だけしたの?それとも作ったこともある?」
「私が作ったんです!それを、レイラ様が……」
ウルウルと瞳を潤ませるジェシカ。
そんなジェシカに、お兄様が口を開いた。
「ジェシカ嬢、少しよろしいでしょうか」
「貴方は……」
「私はレイラの兄であるケネス・シルヴァにございます。まことに申し訳ないのですが、そう発言されるのには無理があるのではないかと」
「どうしてですか……?」
「妹が薬を完成させたのはいつだったか……お分かりでしょうか?」
「え?」
「初めて薬を開発したのは、妹がまだ7歳の頃です。クリスティ統括の奥様が流行り病にかかってしまい、私たちは治療法を見いだせずにいました。その中で妹は薬草を混ぜて薬を完成させたのです。それはこの場にいるすべての人が知っている事実。陛下も国民に薬を分け与え、この国は病に打ち勝ったのです」
「そんな、小さいときから……?」
「先ほどジェシカ嬢は『全ての薬を開発した』と申されておりましたが、ジェシカ嬢と出会う前からレイラは薬を開発していました。それは、『全て』ではないと言い切れませんでしょうか?」
「嘘……っ」
「では百歩譲って、貴女が『痛み止め』を開発したとしましょう。開発者ならばわかるとは思いますが、貴女はどの薬草を使用して、どういった工程で薬を完成させたのでしょうか」
「それは、秘密です……」
「そうですか。まあ、ここには各国から人が居ますからね。ですが私は知りたいです。だって、貴女の言う『痛み止め』がどういったものなのか気になりますから」
「え?」
「だってそうでしょう?それだけの怪我で何事もないように動き回れるくらいの強力な薬です。この国にはまだ無い」
「そ、れは……」
「私が知っているのは『痛みを和らげる薬』です。『痛み止め』ではない。そしてその薬を開発したのは妹。そして……私の父です」
会場が静まり返る。
誰も発言をしないのは、おそらくお父様が怖いからだろう。
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