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「仲良く話しているところ申し訳ございません、クラウス殿下」
そう言って近付いてきたのは騎士団団長。
カペルのお父様だ。
「少しカペルをお借りしても?」
「私は構いませんよ。しかし……」
そう言ってクラウスが私を見る。
私は不満を露わにしてテイラー公爵を見た。
「なんで公爵はすぐ私からカペルを引き離すんですか!!」
「申し訳ない、レイラ嬢。先ほどのジェシカ・リードの件で警備の手が足りなくなってしまったのです。本当なら私も大切な貴女方との時間を過ごしてもらいたいところなのですが」
困ったように笑って公爵はそう言った。
確かに、ジェシカの事で人員を割いてしまったら手が足りなくなるのも頷ける。
でも……。
「一緒に、美味しいもの食べたかったな……」
そう言って落ち込むとカペルに頭を撫でられた。
「レイラ、大丈夫」
「何が」
「生誕祭が終わっても、俺はいつでもレイラと一緒にどこでも行くから」
「ほんと?」
「当たり前だろ。仕事終わったらレイラに会いに来るから、ちょっとだけ待ってて」
カペルはそう言うと私の頭に口づけて公爵と一緒に歩いて行った。
……あの人、本当にどっかの国の王子様とかじゃないの?
「本当に、昔からカペルはレイラの事を溺愛してるよね」
「レイラが私に抱き着こうものならカペルからちょっと睨まれるんだから」
クラウスとティアナが困ったようにそう言って笑う。
好きな人から好きでいてもらえるって、嬉しいな。
私はちょっと笑ってレオとマナの手を取った。
「じゃあ、レオとマナが私に付きあって」
「もちろんです、お嬢様」
「てか、お嬢一人にしたら変な事に巻き込まれるから一人にはしません」
「何故レオはマナのように可愛く返事が出来ないんだ」
不満な顔をレオに向けても涼しい顔。
こいつは本当に私を主人だと思っているのか。
そう思いながら、私は二人と一緒に会場を出た。
煌びやかなパーティー会場は何度出ても慣れない。
シルヴァ家の娘と言うだけで好奇の目を向けられるのは幼いころからだ。
ゲームの中で出てこなかった「レイラ・シルヴァ」。
カペルの婚約者だったんだろうけど、簡単に婚約破棄されていた令嬢。
ゲームの中の私は、シルヴァ家の娘であっても賢くなかったのだろうか。
だから大切にされてなかったのだろうか。
そうだったら、私がこの世界で私自身を救ってあげたってことになるのかな。
「レオ、マナ」
「はい」
「どうしたんです?」
「私、ちゃんと生きてるよね?」
私の言葉に二人は首を傾げて、それから「はい」と言った。
【この世界の悪役】
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