モブだった天才姫

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ジェシカの脅威も過ぎ去り、私達の生活には平和が訪れた。 私はお城の研究員達と共に日々薬を開発していた。 王妃教育を受けているティアナもお城で生活することになり、本格的にクラウスとの結婚が見えてきた。 私の大事な二人が結ばれる日が近いと考えると嬉しさと同時に寂しさも出てくる。 いつまでも4人で一緒に……って、難しいのかな。 私はモブだ。 元々の世界でいたかどうかも分からない。 カペルにいつ捨てられるのかと考えると怖くて夜も眠れないほどだ。 カペルは私を好いてくれているだろう、今のところ。 でも分からない。 この先何かあって、簡単に捨てられてしまう可能性だってまだある。 だって実際は私とカペルは結婚してないからだ。 ゲームの中でカペルは主人公と結ばれなければ知らない国のお姫様と結婚したりしてたから。 そうなる可能性もあるわけで。 ティアナとクラウスが幸せだからと言って私が幸せだとは限らない。 捨てられてもいいように、日々研究を重ねて、この国に居ても許されるような存在意義を示さなければならない。 「意気込むのはいいですが、カペル様がお嬢を捨てる?ありえなくないですか?」 レオが呆れながらそういう。 私は持っていた試験管を置いてため息をついた。 「甘いわね、レオ。カペルが夜会に出ると令嬢たちが騒いでいるのは知っているでしょ?彼は選びたい放題なの、女なんて」 「騒がれてるからって簡単にお嬢を捨てるとは思えませんが」 「捨てられないように頑張ってるからそう思えるだけよ。現実は甘くない」 アルコールランプによって熱されているフラスコを見てレオがため息をついた。 「お嬢は本当に何も知らない平和なお花畑ですよね」 「は?突然の暴言」 「貴女、世界各国から縁談が届くようなお嬢様なんですよ。もっと自分を知るべきではありませんか?」 「は?縁談?」 「そうです。ただ、貴女がカペル様と婚約されているから公になっていないだけで、シルヴァ家とつながりを持ちたい人間なんて山ほどいるんです。それに、お嬢は能天気お花畑ですけど、世界を救った英雄です。そんなお嬢が何を必死になることが?もしもカペル様に捨てられても、お嬢はもう安定の未来が待っているんですよ?」 私に縁談だと…? カペルの事しか頭になかったから考えたこともなかったけど……。 それもそうだ。 世界はシルヴァ家を欲している。 シルヴァ家の人間と結婚してつながりを持ちたいと願う人間が居ても不思議じゃない。 ・
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