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「そうじゃ、今日レイラ嬢をここへ呼んだのには他にも理由があるんじゃよ」
「どうかされましたか?」
ワイナー様はレオンさんからロゼットを受け取ると私に見せた。
「これ……」
「レイラ嬢を是非、このアストロベガ城専属の薬師に迎えたい」
アストロベガ城の薬師と言えば、世界中の薬師憧れのものだ。
それに、私を?
「ワイナー様、これは……」
「君はテイラー公爵の息子と婚約中じゃったな」
「は、はい……」
「あの国を離れられんのも知っておる。じゃから、特例ではあるが、エストラルド王国で生活をしながら、こちらへも通っていただきたい」
「それはかまいませんが、果たしてそれでよろしいのでしょうか?そんなことを許されては、現在のアストロベガ城の薬師の皆様に不満が……」
「もう話しておるんじゃ。みんな賛成してくれた」
ワイナー様は穏やかな微笑みで私を見た。
「世界を救った天才姫を、この城で匿うのは良くないとな。この先もレイラ嬢には沢山の人が救いを求めてやってくるじゃろう。その時、このアストロベガ城を使用するといい。ここは世界の中心じゃ。周りも集まりやすく、相談もしやすいじゃろうて」
「城の中のものはご自由にお使いください。すべて、レイラ様がおっしゃられるものは揃えるようにいたします」
レオンさんが綺麗に頭を下げる。
あまりの事に私はレオとマナを見た。
二人も驚いていたのか、私を見て目を瞬かせていた。
「レイラ嬢、君はもう世界の宝そのものじゃ。世界をこれからも救ってほしい」
私にそんな力はない。
私はただ提案しただけだ。
元の世界にあったものを提案して、それで皆が救われたのなら、私のおかげじゃない。
元の世界の発明をしてくれた人達だ。
でも……。
この世界で、その提案をしてくれる人は私しかいないってことだよね。
だから、皆私を頼ってくれるんだよね。
私は手を握り締めてレオンさんからロゼットを受け取った。
「わかりました。微力ながら、私の力をお貸しいたします」
「ありがとう、レイラ嬢」
ワイナー様はそう言って嬉しそうに微笑んだ。
屋敷に戻るとマナはロゼットを額に入れて壁に飾った。
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