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「ずっと聞きたかったんですけど」
レオがロゼットを見つめながら口を開く。
「なんでお嬢は俺やマナを助けてくれたんです?」
レオとマナは貴族から酷い仕打ちを受けていた。
ゲームの中では絶対に会っていない人達。
「んー……なんかほっとけないなって思って」
「誰も俺たちの事なんて助けてくれませんでした。お嬢が助けてくれたから、俺たちは自由になれた。あのクズを、シルヴァ家であるお嬢が潰してくれた。俺とマナは一生お嬢のために命を懸けて仕えます。お嬢のためなら、どれだけ汚い事でもやります。……その気持ちでいつも生きてるのに、なんでお嬢は一人でなんでも出来ちゃうんですかね」
「なんでも出来るわけじゃないって。あの時は人買い制度を失くそうとしている真っ最中だったし、お父様ってそういうの嫌いでしょ?だからお父様が動いた感じだし」
「それでも、旦那様は俺たちがここで働くのを反対なさっていました」
「あれは、ほら。二人とも、貴族に嫌な事されたじゃん。それなのにまた貴族の家で働くってなったら嫌な事ばっか続くじゃんって」
「……シルヴァ家は本当に温かい場所です」
レオが微笑むとマナも泣きそうになりながら微笑んだ。
私の幸せのために動き回ってくれていた二人。
私の大事な二人。
「ねぇ、二人は私が結婚しても一緒に付いてきてくれる?」
「もちろんです、お嬢様」
「お嬢一人にして問題が起きないわけないんで」
「だから、どうしてレオはマナみたいに可愛く返事が出来ない」
レオに不満な顔を向けていると部屋がノックされた。
「レイラお嬢様、カペル様がお見えになられております」
メイドさんが頭を下げると同時にカペルが部屋に入ってくる。
相変わらず私服のカペルは私を殺しにかかってくる。
「カペル?どうしたの?」
「用がなければ会いに来ちゃダメなの?天才姫」
「そう言うわけじゃないけど……」
レオとマナも頭を下げて部屋から出ていく。
二人きりの空間になった瞬間、急に緊張してきた。
いや、別にカペルは普通だし。
私が単に婚約破棄されないかびくびくしているだけで。
「レイラ」
「何?」
「最近、前よりも薬の開発にいそしんでるって聞いた」
「ああ。今度はね、酔い止め薬を作ろうと思ってるの」
「酔い止め?」
「馬車で酔うって人がいてね、その人はいつも移動の時は覚悟して馬車に乗ってるってお父様に話してたの。そういった人が楽になればいいなって思って」
「レイラって、本当に色んなところに手を出すな」
「だって、酔うって大変じゃん?その人、死ぬまでその状態を味わうんだよ?私だったら耐えられない」
顔をしかめるとカペルが笑った。
「そうやって、周りの声にちゃんと反応出来るから『天才姫』なんだろうな」
「その呼び方、本当はやめてほしいんだけど。もう世界中で言われてるから諦めてるけど」
遠い目をしているとカペルに髪を触られた。
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