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そして今(1)
私が頻繁に池袋で遊んだのは十代の頃までだ。
関西の大学に進学して、就職先も関東ではなかったため、池袋へ行けるのは実家に帰省した時くらい。その実家も私がアメリカで働いていた数年間の間に、近郊へ引っ越してしまった。
こうなると、もう池袋との縁も切れて……。
今回、出張で東京まで来る機会があったので、久しぶりに池袋の街をぶらぶらしている。
もう何十年ぶりだろうか。最初に「池袋の表の顔」という認識だった東側を見て回ると、すっかり変わっていた。確かに表は表であり、明るい空気が漂っているけれど……。
秋葉原が電気街からオタク文化の街に様変わりしたのは噂で耳にしていたし、池袋でもサンシャインシティの近くに似たような一画が出現したという話は聞いていた。しかし実際に目にすると「なるほど」という納得よりも「信じられない」という驚愕の方が大きかった。
そして今、こうして西口つまり「池袋の裏の顔」を歩き始めている。
まずは、私にとって最もアングラなイメージの強かった北端からスタートだ。
「あの辺りには、友人たちとよく行ったハンバーガー屋があったはず」
ファストフードのチェーン店だが大手ではなく、有名店より安価だったお店。懐かしく思いながら視線を向ければ、もう影も形もなかった。
飲食店が潰れた後には似たような飲食店が入る場合も多いそうだが、それすら見当たらない。ファストフードには向かない場所だったのだろう。
よく遊んだビリヤード場もこの辺りのはずだが、全くわからなかった。小さな雑居ビルだったのは記憶にあるが、それらしきビルはいくつも建ち並んでいて特定できない。
いや、そもそも同じビルが残っているとは限らないのだ。ビルの耐用年数を考えれば、とっくに建て替えられているかもしれない。
そして、雑居ビルといえば……。
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