くれなゐの花嫁～大正浪漫、没落令嬢の恋は潮風に揺れて～

プロローグ

「勝手なことをして、すみませんでした」
「顔を上げろ」

……怒っているわ。どうしよう。

彼はじっと私を見ていた。

「……おい。娘。名は何と申す」
「篠原繭子(しのはらまゆこ)です」

彼はため息を吐いた。

「覚えておく」

……ああ、これはもう首だわ。

帰れない私は、目の前が真っ暗になっていた。