32人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「おはようございます。お休みありがとうございました」
事務所に挨拶を済ませ、持ち場に着いた。
常時3名で対応する本社の受付。同僚にもお礼を言いテンプレートの様な笑顔で席に着く。
その二人はこの二日間の出来事を教えてくれた。
社長夫人が来ていつもの秘書課長いじめがあった事。
会社を大きくするために力を貸してくれた会社のお嬢様と結婚した社長。その奥様は時々会社に来ては悪態を繰り返していた。
どこから聞いたのか同僚は、社長はそんな結婚を悔やんでか息子の海斗には好きな人と結婚して欲しいと漏らしているらしい。だから二人は自分達にもチャンスがある!と盛り上がっている。
「ねぇ、七海。今日が受付最終日だね、寂しいなぁ…でも海斗さんを狙うライバルが減るし!七海が望んでいた秘書課に行けるんだし。喜ばなきゃね」と私まで巻き込んでいる。
「うん、今までありがとう。楽しかった」
言い終わるか終わらないうちに電話が点滅している。秘書課長席からだ。
「受付、佐藤でございます」
「社長、お出かけです」
「かしこまりました」
その連絡が入るとロビーの空気が一気に変わる。一人は社長車の運転手さんに連絡を入れ、一人はロビーの扉を全開にする。一人はエレベーターの扉の横に立つ。
ロビーを歩いている社員がその様子を見て察知をする。全ての動きを止め並んで社長が出て行くまで見送る。
会社をここまで大きくした社長への大げさな程の敬意を表しての事なのか、誰の指示なのかは今では誰もわからない。
最初のコメントを投稿しよう!