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社長がエレベーターから車に乗り込むまで、空気が凍る。
社長が出て行くとロビーは一時停止ボタンを解除したかの様に一斉に社員が動き出す。
秘書リーダーは私達に会釈をしエレベーターに向かう。
いつもは真っ直ぐ受付カウンターに戻る私は今日はリーダーの後を追った。
「金子リーダー、私この度秘書課への辞令をいただきました佐藤七海です。明日から宜しくお願い致します」
「あぁ、あなただったの。申し受けてます。でも私も辞令をいただいて今日が秘書最終日。残念だけどご一緒出来なかったわね」
「えっ?金子リーダーが異動されるんですか?」
優秀な秘書だと聞いていた。その人が何故と顔に書いてあったのか、リーダーが微笑みながら続けた。
「別に珍しくないのよ、だって秘書課長がいる限りこの上はないの。社長のお側に四半世紀以上つかれている方に敵うわけがない、即ち社長から見れば全てが使えない秘書と言う事」
「そ、そんなぁ」
「あ、ごめんなさいね?これからの方に言う事じゃなかったわね……頑張ってください」
エレベーターの扉が開き会釈をして乗り込んだリーダーを見送った。
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