ゴールデンドロップ

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秘書になり2ヶ月。 1日の仕事の流れもわかり他の秘書二人と同じ位に業務分担が増えた。 毎朝秘書課長が入れるお茶の準備と後片付けもその中に含まれている。 主な仕事は秘書課に回される電話の取り次ぎと直にかかって来る社長とお付き合いがある方への対応。大量の郵便物の整理。スケジュールの下調べ。 電話のナンバーディスプレイが光る直電だ、下4桁を見て暗記している相手を特定、必要な資料を出しながら待たせぬ様に2コールで出る。 「お待たせいたしました…………はいかしこまりました申し伝えます。砂川様、確認させていただきたいのですが、明後日のゴルフのお迎えは6時50分で宜しいでしょうか?……ありがとうございます」 秘書課長の視線を感じた。受電記録に入力し、次の仕事にかかる。 終業の時間になり皆が帰った後、私は社長室のゴミ箱をゴミ袋に移していた。そこに秘書課長が入って来た。 「あら、そんな事清掃さんにお任せすればいいのに」 「はい、でもこれをしないと……」 私はゴミをひとつづつ確認をしながら移していた。不思議そうに見ている秘書課長に。 「毎日あまりにも郵便物が多いので、必要な郵便物を覚えないといけないのはわかるんですが、不必要な郵便物も覚えた方が効率的かなって」 「そういう事ね」秘書課長は納得した様だ。 「それに何度も送って来るDMにはお断りの連絡とか、相手様の社名を覚えておけば電話をいただいた時に直ぐに対応出来ますから」 黙って頷いて聞いてくれていた秘書課長は突然にでも寂しげに話し出した。 「昔ね、とっても大切な親友がいたの、言葉では表せない親友が……何故かあなたを見ていると思い出すのよ。優秀な秘書だった……電話の取り次ぎとか見ていてあなたもそうなるんじゃないかって思ってね」 「その方は?」 私の問いかけに黙って首を横に振り、作り笑顔を向け 「じゃ、お先失礼するわね」 と出て行った。 私は作業を続ける。ゴミを移す、そのもうひとつの目的、検体採取をする為に。
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