ゴールデンドロップ

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朝、秘書課長がお茶を入れる準備をしていた。茶器を用意しながら前に見た湯呑みが目にはいる。 「おはよう」後ろから秘書課長の声がする。 「おはようございます」私は向き直り挨拶をして茶器を出した。 秘書課長はいつもの手順でお茶を煎れている。茶器にいれたお湯を急須に移す音を聞き、私は思わず声が出た。 「あっ!」 驚いた秘書課長が振り返る。 「ん?どうかした?」 「あっ、すみません。お湯の温度がまだ高いかも……」 「えっ?いつもと同じ時間冷ましたわよ?」 「生意気な事を言ってすみません……今日の茶葉は上級煎茶です、なのでいつもより5度は下げて70度から75度じゃないと渋みが……本当にすみません。今急須取り替えます」 秘書課長は呆気にとられた様子で私を見ている。 「佐藤さん、お湯の温度わかるの?」 「はい、注ぐときの音で……」 「音?」 「はい、上手く言えませんが音の硬さというか…… すみませんでした、用意出来ました」 私は後ろに下がり秘書課長がお茶を煎れ持って行くのを見た後、急須を持ち残りのお茶を最後の一滴まで茶器に注いだ。 そして急須のお尻を叩いて蓋を半分被せ時間を見計らい二煎目を二人分煎れた。 秘書課長が帰って来た。 「先程は失礼いたしました。これ煎れたので一緒に召し上がっていただけますか?」 「あら、ありがとう。それと社長がね、今日のお茶は旨い!って褒めてくれたわ、ありがとう」 そう言って嬉しそうにお茶を口にした。その顔を覗きこむように伺っていた。 「あら、美味しい!」 「ありがとうございます。さっきの二煎目です」 私もお茶に口を付けた。美味しい……。小さい声で呟いた。 「佐藤さんは御存知かな?大山って駅の近くに美味しいお茶がいただける茶処があるの、私はたまに行くんだけどね。今度ご一緒しない?」 「はい!是非!」
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