理解できなくても

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理解できなくても

「わからない。」 『ん?』 「どうして、そうやっていつも一緒にいてくれるの?」 『えー、うーん。好きだから?』 彼は照れたように笑って言った。 「好きだと一緒にいてくれるの?」 『ん、うーんと、それは人それぞれだと思うけど…』 「あなたは、好きだったら一緒にいてくれるの?」 『え、うん、まぁ。』 「じゃあ、好きじゃなくなったら離れていくのね。」 『…。』 「どうして何も言わないの?」 『…、好きじゃなくてなんてならないよ。』 「そんなのわからないわ。」 『わかるよ。』 「どうして?」 『僕にはわかるんだ。』 「あなたにわかる理由を聞いてるのよ。」 『君はすべてを理論的に考えたい人なの?』 「そう、ね。そうかもしれないわ」 『それはどうして?』 「うーん、そうね…。  理論的に考えれば感情を分解できて理解しやすくなって安心できるわ。」 『そうなの?理解できれば安心できるの?』 「あなたは違うの?」 『僕は、そう考えたことがないからわからないな。』 「でも、私はそうなの。」 『あ!僕の【好き】も君の【安心】と同じだよ。  僕には君の安心できる構造で安心を感じたことがないからよくわからない。  君も、僕の好きっていう感情の構造で好きを感じたことがないからよくわからない。  僕の【好き】を君はわからなくても、僕には明確なことなんだよ。』 彼は得意げにそう言った。 「…。」 『…。』 長い沈黙。 「やっぱり私にはわからないわ。」 『そうか、今はそれでもいいよ。  僕がこれから長い間証明し続けるさ。  理解できなくても、僕の好きの暖かさを感じられるように。』 「あなた、ロマンチストなのね。」 『ロマンチストは嫌い?』 「…、考えたこともなかったわ。  でも、あなたのことは嫌いじゃないわ。」 彼は少し驚いたような顔をしていた。 『どうして嫌いじゃないって思ったの?』 「話して、一緒にいても、その、不快じゃないもの。」 『できればポジティブな感じで言って欲しいんだけど。』 「…、  あなたの隣は心地がいいわ。」 私がそういうと、彼は嬉しそうに笑って 『そうか、じゃあずっと一緒にいられそうだね。』 と、私の手を握った。 「…、そう、かもね。」 私もその手を優しく握り返した。
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