可哀想に。

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可哀想に。

「ふーん、まるで信仰対象ね。」 『…。嫌な言い方するな。』 「だってそうでしょ。他にどう言えばいいのよ」 『愛だよ。』 「あっそ。」 本当に気持ち悪い奴ね…、 『僕は、彼女を愛しているだけなんだ。  だから、彼女の言ったことは世界にとっては絶対じゃなくても、僕にとっては絶対だし、  彼女の想いをそのままそっくり実現したい。  それが僕の願いだし、彼女が僕の願いを叶えてくれる。』 …。 「呆れた。私あなたがそんなに馬鹿な奴だって思ってなかったわ。 既にそんなに彼女に心酔して、彼女があなたを侵食してるなんてね。」 『侵食って…』 さっきの饒舌さはなんだったんだっていうくらい、しおらしく目を泳がせている。 「ごめんなさい。気に障ったかしら?」 ピシャッと言う。 『…。』 彼はムッとした顔をしたものの何も言わなかった。 ハッキリしないわね。これ以上の会話は無意味だわ。 「まぁ、どうでもいいわ。  けど、きっとあなた、彼女に侵食されて、貪り尽くされて、抜け殻になって死ぬのね。  可哀想に。」 そう言って席を立った。
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