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君と彼の違い。
僕には好きな先輩がいる。(会社員)
でも、先輩には彼氏がいる。
「なんで、あんな奴と一緒にいるんですか?」
「え?」
「最低じゃないですか、いっつも横柄な態度で、さっきだって命令して人を奴隷呼ばわりするし、自分の意見しか聞き入れないし。
しかも働いてないし。
働いてないのにあの偉そうな態度はなんですか、あれってただ自分の都合がいいように話してるだけですよね。お金が欲しいだけの人に見えます。
ただのヒモじゃないですか!
すごく下品だし、先輩のこと大事にしてるようには思えません。」
「ははっ、確かに。そう聞くとあいつ最悪じゃん。」
「そう思うんなら、」
「でもね、私にはあの人しかいないのよ。」
先輩は遠い目をしていた。
「なんで…」
「なんでも。
理由とかないの。説明できないことってこの世に山のようにあるでしょ?それと同じ、」
「なに、それ。」
「ほんと、意味わかんないでしょ。
でも、それはあなたが私のこと分かってないってことよ。」
何も言えなかった。
プルルル プルルル
先輩の電話が震える。
「ごめん、出るね。」
「あ、はい。」
「優、どうしたの?」
あの男かよ。
「えっ、今から?無理だよ、仕事中だし。
うん、わかった。後、40分くらいかな、そのあとバスに乗って20分くらいはかかるから、帰るのは早くても1時間後ね。
そうはいっても、うん、そうなの。
わかった。なるべく早く帰るね。」
ため息をつきながら戻ってくる。
「ごめんね、早く帰らないといけないから仕事に戻るね。」
「そんな顔してるのにですか?」
「大丈夫よ。」
「もしかしてまたなんか命令されたんですか?」
「命令って、お願いでしょ」
「違いますよ、あんなの。」
「聞いてないのに言わないで」
そう言われると、何も言えない。
「…。」
「ねぇ、私のどこが好きなの?」
先輩は唐突にそう聞いてきた。
「えっ、急になんですか」
「いいから、言ってみてよ。」
先輩の目は少し寂しそうに見える。
「優しいところです。どんな人にも、何事にも一生懸命頑張ってるし、すごく強くて、綺麗だと思います。だからあんな奴とは…」
「そう。」
そう言って微笑むと先輩はまた電話を取り出した。
プルルル
次は先輩が誰かに電話したようだ。
「あっ、もしもし。ごめんねまた電話しちゃって。急なんだけど私のどこが好き?」
彼女は穏やかな笑顔のまま、電話相手にそう聞いた。
またってことは、彼氏か…、
すると、すぐに
「ははっ、そっか。ありがとう。」
と言って電話を切った。
そして、
「ほらね、あなたじゃないのよ。」
と、考えられないほど冷たく言い放たれた。
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