家出少女保護?

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家出少女保護?

そう、言ってしまえば単純に気まぐれだった。 仕事が終わって、ぼんやり街を歩いていたら暗い顔した女の子がいたから声をかけてみただけだ。遠くから見たら随分大人びていて、もう成人してるとばっかり思っていたのに、話してみたらこのざまだ。 俺は今、少女誘拐犯になろうとしているのかもしれない。 「ねぇ、お兄さん働いてないの?」 『え?』 「ずっと家にいるじゃん。働いてないの?」 『はぁ? あのなぁ、お前が寝てる間に働いてんだよ。』 「ふーん、そうなんだ。」 いや、自分から聞いといて反応薄いな。 「私が寝てるときっていうことは、いかがわしいお仕事?」 『はぁ⁉︎』 何言い出すんだ、このガキ つーか、 『あのさ、お前最近いつ寝てるか知ってる?  つか、起きてから窓の外見たのかよ。』 「え、見てない。」 『今、お前が目ランランさせてる時間は夜中の2時な!! 俺はちゃんと昼間働いてるから!」 まぁ、確かに半地下のここからじゃわかりにくいけど… 「えっ⁉︎」 びっくりした女の子は上の方にある窓のカーテンを背伸びして開けた。 「うそ〜〜〜!!本当だ、真っ暗!!  夜だ!夜!すごいーー!  私夜型人間になってる!!  今、夜中の2時なんでしょ?私こんなに遅くまで起きてたの初めて!」 なぜか、キャッキャッとはしゃいでいる。 興奮するところがわけわかんねーな、てか、その歳で夜更かししたことないって、真面目かよ。 『あー、はいはい。わかったから。』 「すごいよね!ね⁉︎ね⁉︎」 『すげーな、うん。』 「すごいすごい!!」 『いや、いいからとりあえず落ち着けよ』 ちょいちょいと手招きしてそばに座らせた。 すると、 「でも、昼働いてたらお兄さん今眠い?」 『え?』 「眠いよね、疲れてるのにはしゃいじゃって…。  ごめんなさい、寝ていいよ」 女の子は急に不安そうに言った。 『別に…。』 「私、お兄さんが寝て1人になっても逃げないよ。」 『はぁ、あのな…、』 不安そうに揺れる瞳を見ると、何もいえなかった。 ぽんぽんと頭を撫でて 『ガキが気つかってんじゃねーよ、大丈夫だから。』 「本当に?」 『本当に。』 女の子は何故か顔が曇ったままだった。 『あー、もううぜーから飯にしよ飯。   腹減ってんだろ?』 「ご飯⁉︎やったー!!  今日のご飯何?」 『ご飯と味噌汁』 「…。」 急に死んだ魚のような目で俺を睨みつけてくる。 『んだよ、文句あんのか?』 「昨日もだった。」 『うん。』 「今日の朝もだった。」 『うん。』 「今日の夜もなの?」 『え、うん。』 「なんでーーーーーーーーーーーー  違うの食べよーーーーよーーーー  飽きたよーーーーーーーーーーー」 『うるせぇよ、響くからやめろw』 「じゃあ、違うメニューにして」 『それは無理』 「なんで⁉︎」 『…。』 「あ、お金ない?」 『ちげーーよ、金は、結構ある。』 「だったらなんで?」 『味噌汁以外の作り方知らない、』 「…………。」 『…………。』 「………………………………。」 『…………。』 「……、え?」 『いや、ためたな』 「お兄さん一人暮らし歴何年?」 「かれこれ6年」 「6年間ご飯とお味噌汁で生きてきたの?」 「いや、はじめの頃は外食ばっかだったかな、今もお昼は外で食べるし」 「その他はご飯と味噌汁?」 「…え? うん。」 「うそっ!考えられない!」 女の子は軽蔑したような目で俺を見てくる。 「はぁ⁉︎そんな目で見なくてもいいだろ!  つか、そういうお前は料理できんのかよ!」 「できないわよ!」 「だったら偉そうに…、  え?できねーの?」 「え、できないよ。」 「本当に?」 「本当に。」 「うわ、俺らの生活能力終わってるじゃん。」 「ほんとだ」 「このまま死ぬかもなー」 「料理勉強しなくちゃ。」 「てか、そんなこと言って、ずっとここで暮らすつもりかよ。」 「え?そうだけど」 「いや、あのn…」 「レシピ本かってきてよ!仕事終わりにさ!」 「んでだよ、だるい。」 「えーーー、私ずーーーーっとご飯味噌汁って嫌だよーー」 「出前でも取ればいいだろ。」 「へー、毎日出前でもいいんだ。お金が飛ぶように無くなっていくね。」 「うっ…、  …、わーったよ、買ってくるよ」
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