無数の支配者は雷鳴の先に

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 雨雲と稲光が見えた。  白銀の平原だけでなく、おもてのひとびとが慌てて屋内に避難をはじめる頃合いだ。現に小走りの顔見知りたちが見える。  落雷が平原にあれば、無数の火花と巨大な火球が現れる。  身重のいまは見物にいけないが、そうでなければ、と思うくらい見事なものだ。 「この子がおっきくなったときって、どうなってるんだろうね」  ジルはなにもいわず、そっと窓を閉める。 「文献だのの話じゃなくて、俺は……おまえたちと実際に見てみたいよ」  雷鳴が聞こえるなか、彼の声ははっきりと耳に届いていた。
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