2人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうなの? だって、水をたくさん飲むって……独占されないかな」
頭を仰け反らせ見上げたミノのひたいに、ジルは自分のあごを乗せてくる。
「虫たちと一緒だよ、たぶん。その……水を蓄えるっていうのかな……たぶんね」
「たぶんばっかり」
「植物のことは、文献にしか残ってないから」
「ショクブツ? それが支配者の名前?」
「種族の名前かな。俺たち予報士が代々あちこち歩いて、気候も調べて、西の都が一番適してるって判断を下したみたいだよ」
「支配者と西の都と、どう関係があるの? 西に集められるのは、若い子たちでしょ?」「芽を出す条件があって――まあ、それは実際に見ないとわかりにくいか」
「それも、西にいかないと見られないの?」
ミノが眉をひそめると、ジルはうなずいた。
「なあミノ、俺はもう亡くしたくない。おまえとも子供とも、ずっと暮らしていきたい」
嬉しくなったミノは、笑顔を浮かべることしかできなかった。
おもてを旅して歩く予報士は、死にたがりばかりだと評判だ。
それがミノと暮らしていこうというなら、もうジルは死にたがりではないのだろう。
窓の外、急速に暗雲は大きくなっていっていた。
最初のコメントを投稿しよう!