無数の支配者は雷鳴の先に

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「そうなの? だって、水をたくさん飲むって……独占されないかな」  頭を仰け反らせ見上げたミノのひたいに、ジルは自分のあごを乗せてくる。 「虫たちと一緒だよ、たぶん。その……水を蓄えるっていうのかな……たぶんね」 「たぶんばっかり」 「植物のことは、文献にしか残ってないから」 「ショクブツ? それが支配者の名前?」 「種族の名前かな。俺たち予報士が代々あちこち歩いて、気候も調べて、西の都が一番適してるって判断を下したみたいだよ」 「支配者と西の都と、どう関係があるの? 西に集められるのは、若い子たちでしょ?」「芽を出す条件があって――まあ、それは実際に見ないとわかりにくいか」 「それも、西にいかないと見られないの?」  ミノが眉をひそめると、ジルはうなずいた。 「なあミノ、俺はもう亡くしたくない。おまえとも子供とも、ずっと暮らしていきたい」  嬉しくなったミノは、笑顔を浮かべることしかできなかった。  おもてを旅して歩く予報士は、死にたがりばかりだと評判だ。  それがミノと暮らしていこうというなら、もうジルは死にたがりではないのだろう。  窓の外、急速に暗雲は大きくなっていっていた。
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