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細かい金属片から平原は成っている。
そこを渡る風に、ミノはうんざりしながら息をつく。
首長たちのマスクと違い、周囲で様子を見守るミノたちのものは簡易なつくりだ。長時間平原にはいられない。目に見えない微細な金属が肺に積もり、生命にかかわることになる。
「父さん、あたし戻ってる」
となりの父は、ミノを一瞥した。片目は濁り、見えなくなっている。
「それならジルに天気がどうなるか訊いといてくれ」
ミノは口ごもった。父に黙ってジルのもとにいくつもりだったが、見透かされると素直に返事ができない。
父は娘のミノと予報士のジルを結婚させたがっていた。できるだけ顔を合わせる時間をつくろうとしている――それを理解していた。
「昨日は西にでかい雲があったんだ、簡単に消えると思えん」
声は重かった。父が気にするのだ、ほかにも誰かが気にし、すでに予報士であるジルに尋ねているだろう。
「頼んだ」
ミノはうなずき、その場を後にする。
ジルはよそから流れてきた予報士だ。
同世代の友人たちのなかには、ミノとジルの間に漂う空気を親密だ、と評するものもいる。
それはそうだろう。
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