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誰も彼もが首長の会合に足を運んでいるらしく、集落のなかはとても静かだった。
集落の中央にそびえる、この一帯で一番高い建物――尖塔は会合に背を向けたときからずっと、ミノの視界に突き立てられているようだった。
そこにジルがいる。
尖塔を前に、ミノは声をかけた。
「ねえ、いる?」
「俺しかいないよ」
すぐに返事があり、ミノはなかに入っていく。
「ジル、天気はどうなりそう?」
「きみで八人目だ」
降る、とちいさな声が続いた。
「あたしの前の七人に伝えた?」
「もちろん。会合は?」
五階建ての塔の二階には、寝泊まりのできる部屋があった。彼はそこにいるはずだ。かたい音を立てる、かしいだ階段をミノは上っていく。
急な階段を、一段一段ゆっくり上る。そのうち階段の上り下りがつらくなるかもしれない。どのくらいのことが母体として負担となるのか、そこがまったくわからなかった。
「あの噂、ほんとかな。国が変なことはじめるっていうやつ」
今年十五のミノが生まれる前から、国は計画を立てている、といわれていた。
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