無数の支配者は雷鳴の先に

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「天気のこと、みんなに知らせたほうがいいかな」 「何人も訊きにきたんだ、ほかの連中がきっと伝える。ミノはここで休んでいったら?」 「どのくらい降るの?」 「夜には止むと思う」  抱えられながら部屋に入り、壁際に積まれた布団に並んで腰を下ろした。  狭い部屋だが、足を伸ばしていられるくらいに片づいている。ジルが暮らす前は、ここはただの物置だった。いまは曲がりなりにも居住空間となり、寄り添って過ごすには十分な場所だ。 「雨になったら、しばらく水には困らないね」 「そのかわり空気は淀むけどな」 「もっと上等のマスクがあったらいいのに」  雨が降ったら、各家庭で水を貯めておく。また、それぞれの金属の平原の砂中に暮らす昆虫たちが、水分を身体に蓄えはじめる。それを捕らえておけば、昆虫たち個々が水瓶となるからとても助かるのだ。  天上から水分が地表に叩きつけられることで、金属の成分が空中に舞い上がってしまう。一定期間は空気が汚れてしまうのが難点だ。首長たちのようなマスクがあればいいが、ミノたちのものはのどへの刺激が強い。 「マスクなしの生活ができたらいいんだがなぁ」 「ジルみたいに、ずっと家にいる?」
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