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腹の子のことを知ったときジルは泣き、それから彼から後悔を感じなくなっていた。
ミノが子のことを知らせた日のうちに、ジルは父を訪れ話し合いをしていた。
なにを話したかは聞かされていない。
ただ父はその日から、しきりにふたりを結婚させたがるようになった。そしてジルは出立の準備をしなくなっている。集落で暮らすには技能が必要だ。予報士の彼なら、その技能で集落に居場所を得られるはずだ。
ミノに寄りかかって腹を撫でると、ジルが手を重ねてきた。
「この間、おまえのおやじさんが、俺たちに西にいくようにと」
「西?」
「西の都だよ。新婚夫婦や妊娠中、あとはちいさな子供のいる夫婦か。それを国が集めるんだ。あんまり集落内には広めないように、って前置きらしい」
「へんな話。都なんて遠くて無理じゃない?」
古代の生きものの話といい、へんな話はあまり聞きたくなかった。
「俺はあっちこっち渡り歩いてただろ? なかには金属に埋もれてない土地もあって」
ジルの左目が、壁際の荷物を一瞥した。
その荷の中身は、以前見せてもらったことがある。
たくさんの黒い粉の入った袋と、たくさんの黒い粒の入った小袋だった。
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