2人が本棚に入れています
本棚に追加
土と種、といわれても、ミノにはなんのための道具かわからなかった。
「その土地で……おそらく国が計画を動かすんだと思う」
「……ずっと昔の、支配者だってやつでしょ? 国はまたそいつに支配されたいのかな」
何故なのかわからない。胸に重いものがわだかまっている気がして、ミノは立ち上がった。部屋の小窓を開け、外をうかがう。
「ほんとだ、雨雲」
空の遠く、巨大な暗雲が立ちこめていた。
続いて立ち上がったジルが、背後からおなじ景色を眺める。背中から抱きしめられ、ミノは彼に身体を預けた。
「こっちの景色、あたし好きなの。雨のあとにさ、晴れるとさ、ぱーって光ってすごくきれいなんだよ」
白銀の平原と違い、そちらに広がるのは鉄の混じった平原だ。光を受けたときの反射が違う。いくつか民家が建ち、それがなければ延々と輝く平原を見渡せるはずだ。
なにより、鉄の下で暮らす昆虫は肉厚で干物にもできる。もっと鉄の平原が広ければ、と思うくらいに美味なのだ。
「支配者っていうけど、そういうのとも違う。伝令がちゃんと伝えてないか、伝令もわかってないか」
最初のコメントを投稿しよう!