無数の支配者は雷鳴の先に

9/11
前へ
/11ページ
次へ
 土と種、といわれても、ミノにはなんのための道具かわからなかった。 「その土地で……おそらく国が計画を動かすんだと思う」 「……ずっと昔の、支配者だってやつでしょ? 国はまたそいつに支配されたいのかな」  何故なのかわからない。胸に重いものがわだかまっている気がして、ミノは立ち上がった。部屋の小窓を開け、外をうかがう。 「ほんとだ、雨雲」  空の遠く、巨大な暗雲が立ちこめていた。  続いて立ち上がったジルが、背後からおなじ景色を眺める。背中から抱きしめられ、ミノは彼に身体を預けた。 「こっちの景色、あたし好きなの。雨のあとにさ、晴れるとさ、ぱーって光ってすごくきれいなんだよ」  白銀の平原と違い、そちらに広がるのは鉄の混じった平原だ。光を受けたときの反射が違う。いくつか民家が建ち、それがなければ延々と輝く平原を見渡せるはずだ。  なにより、鉄の下で暮らす昆虫は肉厚で干物にもできる。もっと鉄の平原が広ければ、と思うくらいに美味なのだ。 「支配者っていうけど、そういうのとも違う。伝令がちゃんと伝えてないか、伝令もわかってないか」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加