枯れた女王様の恋愛事情

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長年AV監督をやっていると性的感情が麻痺する。 なんせ仕事なんだから。 男優、女優が本当に感じているのかなんてはっきり言ってどうでもいい事。 大事なのは視聴者がどれだけエロい気持ちになれるかが重要なのだ。 乳首を弄られると、秘部を弄られると、本当に気持ちいいのか? 男性のそれを舐めて咥える事は本当に楽しいのか? それを入れられて、そんな顔になって、獣の交尾の様に何故振る舞っていられるのか? 素の状態でカメラを回す私としてはどちらかというか嫌悪感さえ抱く時がある。 カッコ悪い。 だらしない。 しかも生理用品以上のサイズの物をねじ込まれて、、、自分に置き換えるとゾッとする。 とはいえ仕事。 大体の需要のストーリーさえ掴めば結構撮れる物だ。 そこに自分を置かなければ、ただ男女が裸でプロレスをしている様な物だと思えばいい。 私は監督として演技指導もするが喘ぎ顔やら悶え方等、沢山の資料を見れば掴める。 自分が今まで処女だったのは、私が男性不信という訳でもないし、セックスが何かを知らなかった訳ではない。 ただそこに至るまでにどうしても行かなかったのだ。 何故か? 彼氏の家やホテル等行った事はあるしチャンスもあった。いい感じにもなった。 ただいい感じになればなる程、そこが最高潮になってしまい、服を脱ぎ始める頃には冷めるのだ。 作品の中ではキスから始まり、そこからお互いが興奮しだして、お互いの服をいそいそとむしりだして、裸になり求め合う。 私は服を脱がされる、相手が脱ぎ出すと同時に、自分がただの獣みたいになって行く事に抵抗があった。 怖いというより、ほんと、冷めるのだ。 キスとハグだけで充分。 プライドが高いと言ってしまえば、それまでなのだが、素っ裸になってお互いを無防備に求め合うなんて、、気持ち悪い。 このプライドというか変な嫌悪感のせいで私は処女のままなのだ。 それを越えるいいお相手がいなかった。 と相手のせいと自分の不運を呪う事は簡単に出来る。 まだ10代、20代だったら勢いで取り返せたかもしれない。 でも私はもう30代、勢いに任せるのには歳を取り過ぎた。 職業柄的にも当然皆私は非処女だと思っているし、30過ぎの処女を抱きたいと思う男なんていない。 だから当然恋愛は避けてきた。だって行き着く先にはセックスが待っている。 それは、また違う意味で怖い。相手は必ず私に期待する。だから、虚しくても一人で生きるしかないのだ。 「とりあえず捨てちゃおう!」 と出会い系にアクセスした事もある。職業を偽って。 何度か男性と会ったが、数をこなせばこなす程、 「私は何をしてるんだ?」 と迷走してしまい、馬鹿らしくて止めた。 【エロの女王様】は一皮剥けば、【三十路拗らせ処女】なのだ。 誰も知らない。誰にも言えない。 それでも私だってほんとは優しく抱かれたい。獣じゃないセックスがしたい。 心許せる男性に抱き締められたい。 そんな裏腹な気持ちを抱えているから、仕事帰りは必ず【帰宅拒否症候群】が発動する。 ココのお陰で帰宅は出来ているけど。 自分がセックスか、、、 もうないと思っていたし、そもそも恋愛もしないと決めていたから、アメが【触りたい】と言って来たのには、かなり驚いた。 アメは可愛い。 でも恋愛対象でもないし、アメとのセックスなんて想像もつかない。 でも嫌いではない。 こないだのハグとキスは嫌悪感どころか久々の人の温もりと優しさと癒しを感じた。 平本とのキスとは全然違った。 アメとセックスかぁ、、、、 愛猫とじゃれ合うつもり位ののりで行けるとこまで行ってみようかな?? 有難い事にアメは、私を【エロの女王様】とは思っていないし、、、 アメが経験者かどうかは、また別にして、一回りも違うんだもん、私がもし処女でもアメにならからかわれてもいいや。 がっかりするかな?嫌われるかな? ううん。別に嫌われたっていいや。所詮は拾い猫。嫌なら出ていけばいい。 アメは外に出ない子だし、会社とも面識はない。ここだけの話にすればいいのでは!? 実はこれは、私に残された最後のチャンスなのでは!? 私は遂に賭けに出る事にした。
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