枯れた女王様の恋愛事情

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睡眠薬なしに眠ってしまったのはいったいいつ頃からだろう? 大きな猫さんを拾ってから数時間、朝方眠ってしまった様だから、、今は、、お昼か。 明るい日差しがカーテンの隙間から入ってくる。明るいのがあまり好きではない私の家のカーテンは遮光カーテンだ。家まで陰気臭くなってしまっている、、 苦手なのだ。色んな意味で明るいのは。全て見透かされてる様な気がして。 あ、そうだ。ココのご飯。、、と、あの子ご飯! 私は身を起こし周囲を見たら彼はまだ寝てた。 よく寝るなぁ、、どんだけ肝座ってるんだか、、 昨日熱があったので再び額に手をあて、念の為に熱も計った。 うん。大丈夫、平熱。ホッとした。 暫く彼の寝顔を観察。 長い睫毛。女子でもいける肌のキメの細やかさ。左目の下に小さなほくろ。眉は手入れはされてはいないが整った太い形。唇は厚みも色素も薄い。 確か目が合った時もクリクリした大きな目だったな。 歳はわからないけど、多分イケメンの部類に入る。 とはいえ私から見ると、若いジャニーズか可愛い観葉植物にしか見えない。つまり、男、としての対象物ではない、という事だ。 寝癖の付いた彼の髪の毛をいじっていたら目の前で彼の目がパチクリと開いた。 私はビックリしてその手を引っ込め後退りした。 「おはよぅ。」 彼がもにょもにょと声に出す。 ん???おはよう?私に?誰かと勘違いしてる?確かに昨日は高熱だったしな。 私はあえて突っ込まず本題に入った。 「君ね、昨日路地裏で倒れてて、ここまで連れてきたの。んで、、、食べるだけ食べて、また寝た、と。」 「元気になったんだったら帰って欲しいんだけど。」 彼は聞こえてるのか聞こえてないのか、ボーっとしている。 「おぉーい!聞いてる?? 元気になったんだったらここを出て行ってって言ってるの、言ってる事、わかる?」 私は彼の顔をあえて覗きこんで声をかけた。 「、、、、、め?」 彼が聞き取れない音量で何か呟く。 「え?何?わからない。何て言ったの?」 彼はもじもじしながら、今度ははっきり言った。 「出て行かなきゃ、ダメ??」 可愛い上目遣いで。 いやいやいや、可愛いからと騙されてはいけない。 「当たり前でしょう?私は貴方の事を何一つ知らないし、厄介事に巻き込まれるのはごめんよ。訳もわからない他人を住まわせる人間なんてこの世のどこにいるっていうのよ。困ってるのなら警察か役所に行きなさい。」 私は毅然とした態度で話す。 当然である。何で私がこいつを置いてやらなければならないのか。こんな事を突然言い出す常識のない人間なんて、きっと関わるとろくな事がないに決まってる! 「少しでいい。少しでいいから置いてくれないかな?何でも聞いてくれて構わないし、何でもするから。絶対貴女に面倒かける様な事はしない。もし面倒かけたら警察でもどこにでも行くから。本当に、本当にお願いだよ、、、」 彼は懇願して切ない顔をしている。 多分嘘ではない。 嘘がつける子なら、あんな路地裏で腹を空かせていない。 潤んだ瞳は今にでも大粒の涙が出てきそうだ。何故彼がここにいたがるのかはわからないがとにかく必死なのはわかった。 私は暫く考えた。どうしたものだか、、、とはいえ病み上がりの若いこの子を、「どうしても置いて欲しい」と言う情けない顔も、そんな態度を見て「それでも出ていけ!!」とは、、流石に言い難かった。 「、、、、わかった。じゃあ、今は置いてあげる。でもやっぱり私が危険と判断したら直ぐ警察は呼ぶし、質問したら何でも答えて、そして私の物には触らないで、後、猫、ココって言うんだけど、この子を絶対怖がらせたりしないで、ココが嫌った場合も出て行って貰う。 それでいい?」 彼は嬉しそうに何度も何度も頷く。多分犬のしっぽがあったら振り切れる程振り倒しているに違いない。 「わかった!凄くわかった!ココちゃんとも仲良くする!ありがとう!、、、、えぇーーっと、、お姉さん。」 お姉さん、、ねぇ、、ま、そうだけど。 「私名前は朝宮明美【あさみやあけみ】って言うけど、、ま、好きに呼んでくれていいよ。因みに君の事は何て呼んだらいいかな?」 フルネームを人に紹介するのも、自分の名前がそうである事も何だか久しぶりの様な気がした。 同僚にも友人にも【女王様】で通っているから、、名前なんて呼ばれる事なんてほんと、ない。 「そっか、明美ちゃんか。でもお姉さんだから明美ちゃんは失礼か、、、」 失礼って、あなたにその言葉があったとは、びっくり。昨日は十分、君失礼だったよ?とは言えない。 「僕は、、、明美ちゃ、、、いや、お姉さんに名前付けて欲しいな。拾い子みたいなもんだし、そんな長い事いる訳じゃない。だから、お姉さんが一番呼び安い名前をプレゼントしてくれると嬉しい。」 相変わらず変わっている。 まぁ質問には必ず答える事になっているし、本名を聞くのは簡単だ。 でも知りすぎて情がわくのも嫌だ。 そう思うとあえて勝手に名前を付けるのもありかも。 「うぅーん。そうだなぁ。 じゃあ、雨の日に君を拾ったし、【アメ】でどうかな?安直で申し訳ないけど。嫌なら他のにする。」 私はほんと適当に言った。 ココの時も連れて帰った時とにかくピンクのクッションが気に入りなかなか離れてくれなくて 「ここが好きなの?」 「ほんとにここが好きなんだね。」 からの【ココ】だった。 因みに未だにココのお気に入りはここ【ピンクのクッション】である。 彼は無邪気に喜んだ。 「【アメ】か、うん。嬉しい。それでいい。じゃあ今日から暫くお願いします!あけ、、いや、お姉さん!」 そこから【枯れ果てた女王蜂】と【捨て猫?アメ】とのちょっとした共同生活が始まったのだった。
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