枯れた女王様の恋愛事情

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アメが来て3ヶ月が経とうとしていた。 私達の関係は相変わらず変わらない。平本とも何事もなかった様に円滑に仕事は進んだ。 ただ問題なはのはすっかり情が湧いてしまった私がアメを如何に独立させるか?だ。 恋愛感情のない男女がいつまでも同居しているのはおかしい。 私はともかく、21歳のアメにはもっと自由になって貰いたい。 アメの3ヶ月分の給料は転居出来る位にまでには貯蓄してある。 とはいえ、当の本人が全く動こうとしないのが難点である。 どうすれば、、、 最近そればかり考える。けど仕事には私情は挟まない。やるべき事はやる! ただ少しでも時間が空くと考えるのはアメの事ばかりだった。 そんな状態の私に平本が声をかけてきた。 「その様子じゃ、彼氏の事を考えてるな?」 バレバレ、、、こいつに隠し事は出来ない。 「今ね、一緒に住んでるんだけど、お互いの為に別れた方がいいと思ってるんだ。だけど、どう説明していいのか分からないの。」 平本は少しビックリした様だった。 「孤高の女王が他人と暮らしてるだって?驚きだな。お互いの為って言う位なんだから、きっと深い事情があるんだろうな。でも、結局の所、事情云々より女王は彼氏の事が嫌いじゃないんだろ?その言い方じゃ。」 うーん。確かに。嫌いではない。年齢的とか彼の将来とか、私が勝手に決めている事だ。 アメの意見は確かに聞いてはいない。 「ほらな、やっぱり女王一人で空回りしてるって事だよ。恋愛っーのは一人でするもんじゃない。ちゃんと相手の話を聞いてから結論出しても遅くはないんじゃない?」 何だか悔しい。確かにその通りである。私一人で悩んだ毎日は何だったんだ!平本め!しっかり私を私より分析してやがるっ! 流石に言い返せない。 「だね、、、」 と呟くのが精一杯だった。 今日こそアメと話をちゃんとしよう。そう決意した。 今日も帰宅は遅かったが相変わらずココもアメも待ってくれていた。 「お帰り。お疲れ様。お風呂出来てるよ。」 相変わらずのアメ。 そして必ずお風呂を覗きに来るココ。 いつも通り頭にタオルを巻いたままでバスローブ状態で食卓に座る。 今日もメニューはしょうが焼きとタコの酢の物と大根のお味噌汁。 相変わらず美味しい。 今日仕事であった事とかランチがいまいちだったとか、アメはアメでネットのニュースだったりココと新しい遊びを見つけたとか笑い合って食事をする。 「ご馳走さまでしたっ!」 私は両手を合わせてお礼を言う。空になった食器は自分でシンクに持って行く。 でも皿洗いまでするのはいつまアメだ。 作って貰ってばかりも気が引けるので、私やるよ!と言っても 「いいから、いいから。」 といつもキッチンを占領される。 いつ切り出そうか?と考えているとアメが 「そうだっ!今日プリン作ったんだ!一緒に食べない?」 と誘ってきた。これはチャンスかもしれない。 プリンを冷蔵庫から出す前にコーヒーを淹れる準備をしていた。 私は根っからのコーヒー好きなんで、アメもそれを分かってちゃんと豆から引いている。 「ねぇ、アメちゃん、話があるの。そのまま聞いて?」 アメは手を休めず黙って聞いている。 「あのね、アメってほんとはほんの数日ここにいるって約束だったじゃない?」 アメの豆を引く手がピクッと止まる。 「違うの。私は本当に色々アメに助けて貰った。今日の今日まで引き摺ってたのは私よ。 」 アメは豆を引き終わりフィルターとお湯を準備し出す。 「でもね、このままじゃいけないと思うんだ。アメは21歳。若いしもっともっと外で楽しまなきゃ。こんな年上の女に監禁されてる場合じゃないよ。夢があるって言ってたよね?それを追うのも悪くないんじゃないかな?」 いい匂いがする。引き立てのコーヒーにお湯を注ぐ一番の香りは本当に好きだ。 静かにお湯を注ぐ音だけが部屋に響き渡る。アメは相変わらず無言。 「アメが家を借りる位までは今まで助けてくれたアメのお給料で何とかなるの。それ以上困る様な事があれば同居のよしみで援助はするよ。それだけの事、アメはやってくれたもん。」 目の前に淹コーヒーが運ばれてきた続いてお皿に乗せられた可愛らしいパンプキンプリンがやって来た。 「わっ!美味しそう!甘い物はやっぱ別腹だやよねっ!」 いつもより弾ませた口調で喜んでみる。 流石に一方的に気まずい話をした後だ。気まずくデザートを頂きたくない。 私は早速、 「いっただきまぁす!」 とプリンを一口食べた。 「おいしい、、、」 自分でこのプリンを作ってくれたアメを追い出そうとしているのに、口の中のプリンはそれはもう美味しくて、何だか罪悪感に捕らわれそうだった。 いつも、いつも私の為に美味しい物を提供してくれるアメ。 仕事で嫌な事があったら私以上に怒るアメ。 辛い時には何聞かずただ抱き締めてくれるアメ。 私はいったい何がしたいのか? アメの為と言ってるけど、ほんとは自分が傷つくのを恐れてるエゴなんじゃないか? 何だかどんどん分からなくなる。 でもやっぱりアメの意見は必要だ。 私一人で決断出来る問題じゃない。 「ね?アメはどう思う?そしてどうしたい?」 私は甘くなった口の中にブラックコーヒーを流し込む。ゆっくりと時間をかけて。 アメがゆっくり答えが見つけられる様に。 アメはデザートに一切手をつけず考えこんでいた。 そりゃ無理もないか、、 考え込むアメを横目に私はプリンを食べ、コーヒーを飲んだ。 待ってる素振りをすると答えを急かす様な気がしたので、敢えてそうした。 2杯目のコーヒーは自分で淹れた。 私は何時までも待つ気でいた。 「あけちゃんは、僕の事が嫌いになったの? 」 ポツリとアメが言う。 「違うよ。大好きだよ。ココと同じ位にね。でもココは猫さん、アメは猫さんじゃないでしょ。何時までもこのままって言う訳にはいかないんだよ。アメはね、私と違ってまだ若い、外に出て自分のやりたい事をするんだよ。私は応援してるから。」 母親が息子を諭す様な言い方。伝わるかな? 「どうして一緒にいられないの?若いからってそれが何?外にでなくてもやりたい事はちゃんと見つけられるよ。嫌いじゃないのにどうして離れ離れにならないといけないの?僕迷惑なの?邪魔なの?、、、僕はあけちゃんと一緒にいたいんだ!それが僕の幸せなんだ!なのに、、どうして???」 アメが珍しく声を張っている。 アメの言ってる事は間違っていない。 でも私も負けじと突っ込んだ。 「アメの私に対する好きは、家族としての好きなんだよ。アメはこれからきっと女性として好きになる人が現れる。そうなった時、他人である私達の言い訳が出来ないでしょう?」 私は冷静に話をしているつもりだったが、ここに来てやはり自分が傷つくのを恐れてアメに自立という綺麗事を押し付け様としている。 何が女王様だよ、恋が怖くて、認めたくなくて逃げてるだけ雑魚じゃん。 アメの素直さが余計に眩しい。 「家族として?異性として?僕はそんな事どうだっていい!ただ、今、あけちゃんとココちゃんと一緒にいたいんだ!それの何がダメなの?」
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