枯れた女王様の恋愛事情

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結局綺麗事は正論で論破されてしまった。 嫌いであれば簡単に追い出せるのに、、、 そもそもアメに嫌いになる要素なんてこれっぽっちもない。 癒され救われてる部分ばかりだ。 結局あの時の対話は、とりあえず棚上げ状態になってしまった。 そのまま4ヶ月が突入した。日々のルーティンは変わらない。 ただ唯一変わった事と言えばアメがやたら恋愛物の小説を読んだり、私の作品を観て質問や感想を言ってくる事が増えたのだ。 それ以外特に変わった事はなかったから、読書の趣味が変わったのか、仕事熱心だな。位にしか思っていなかった。 それから暫くしてからの夕食後、片付けを終わらせたアメが私の座っていたソファの横にちょこんと座る。まぁいつもの事か、と思い気にしなかった。 するとアメが私の掌をぎゅっと繋いできた。 あれ? 初めての事だった。 「ん?どうかした?」 甘えモードが炸裂した? アメは何も言わない。私の目をじっと見据える。甘え、、モードではない。 何か真剣に伝えようとする時の目だ。 何を言われるのか少しドキドキした。 「あけちゃん。僕はあけちゃんが好き。」 また、どストレート。真剣眼差し込みで。 私は一所懸命言葉を選ぼうとする。 「うん。わかってるよ。私もアメちゃん大好きだよ。」 誤魔化そうと思って、苦手な頭くしゃくしゃ攻撃。 でも今日のアメは引かない。 「誤魔化してもダメ。僕はね、頑張ってるんだ。家族の好きじゃなく、異性としての好きを。だから今から僕はあけちゃんを抱き締めてキスをする。」 ええーーーっ!全部ばらしちゃう系??? 何て答えたらいいのーーー!ここまで言われて無下に断ったり押し返す訳にもいかない。私の今までの数少ない経験値では計算出来なかった。 えっと、、えっと、、、と考えているうちにふわっとアメが私を包んだ。逃げようと思えば簡単に逃げられるハグだ。 でもそのハグは柔らかく。それこそ大事なプレゼントを包むが如く優しさに満ち溢れている。 温かい。人の体温ってこんなに温かかったっけ?アメの体温で私はゆるゆると溶けそうになっていた。力すら入らない。 アメはそっと口づけをした。優しく、体温をじっくり感じさせるピタっとくっついた唇。 あれ、、?嫌じゃない。 むしろ気持ちいい。不思議な感覚だった。 初めての感覚だった。 今までしたキスはAVを撮るかの如く、無機質で感情はなかった。 アメは駆け引きがない分、驚かされるがそこに誠意を感じた。 「嫌なら避けてもいいんだよ。」 という道を必ず残してくれる。 短かったのか長かったのか束の間のキスは終わりを告げた。 でもアメの真剣な眼差しは、まだ終わってはいなかった。 「あけちゃんってお仕事では【エロの女王様】って呼ばれているんだね。雑誌に書いてあった。」 顔が赤面した。燃えるくらい、、、やめて。ほんとにそれは現在進行形の皆の想像上の生き物。黒歴史にして封印したい。 遂にアメにまでバレてしまった、、、私はエロなんて知らない!この子の前でもエロの女王を演じなければならないのか、、、せめてこの子の前では普通の女子でいたかった。 儚い夢か、、、 私が現実逃避をするかの様に肩を落とした。 「終わった、、、いや、始まってもいないけど、、、」 するとアメが言った。 「で?【エロの女王様】って何?」 ポカンと聞いてくる。 なるほど!そう来たか!ある意味アメちゃんならではの発想! 「何かのキャラクターの名前?エロは何となく分かるけど、女王様ってお城に住んでるんだよね?あ、じゃあ、ここで言うエロって言うのはエロチックではなくて、国の名前かな?だってお城でエロチックは違う様な気がするし、、、うーん、でもあけちゃんがどうしてエロの国の女王様なんだろう?、、、凄いって事かな?」 アメは自分の引き出しを持ってして、あれこれ分析を始めた。 ああっ!神様!未だにこんなに無垢で単純で、いい意味でお馬鹿さんな子を授けてくれてありがとう! これで少なくとも私が【エロに関しては黒帯よっ!】と思わせなくていい!助かった。 「どういう意味なんだろうね?私も知らないや。」 苦笑いの私。 「そっかぁ、本人のあけちゃんが知らないんだったら分かんないね。まぁ、僕にとってはあけちゃんは、大好きなあけちゃん以外に呼び方はないけど。」 「じゃあ続きね。僕はあけちゃんが好き。好きだからほんとはもっといっぱいいっぱい触れ合いたい。あけちゃんのお仕事で撮ってる内容。僕あんなにあけちゃんに触りたい。でも僕、あんな風にしてあけちゃんに嫌な気持ちにさせたくないから上手くは出来ないけどやってみたいんだ!っていうかやるんだ!、、、ダメかな?」 うぅ、、そう来たか。 最近恋愛本とAVを必死に勉強していたのはこの時の事だったのか! うーむ、ハグとキスだけで私の心拍数上がり、めまいがしそうな程とろけたっていうのに、これ以上先、、ましてやセックスなんてとんでもない! 21の小僧に処女がばれるのも屈辱である。こちとら一回り上だぞ! と心の中で息巻いたとしても、それは心の中だけに虚しく響くだけだ。 「ちょーっと待ってアメちゃん。何を教科書にしたかは知らないけど、もっとゆっくり行こう?」 私はとてもじゃないけど、この先は自分でも未開の地だ。怖いって。私処女だよ? とは、言えない。 「だって、こうでもしないと僕はまた家族として捨てられるんだ。僕はあけちゃんを女性として見てるし、好きなんだ。僕のやり方で好きが通じないんだったら、皆の様にするって決めたんだ!」 あららら、そっち方面だったか、、困った。変な風に焦らせてしまった。 そうか、元々最初から常識が通用しない子だったんだ、、、私が勝手に勘違いしていたあの子の愛情表現、、、分かりづらい、、がそれはもう過去である。 こうなりゃストレートにはストレートで返すしか無いだろう。 「アメの言いたい事は分かったよ。私を異性として好きでいてくれてるんだね、ありがとう。気持ちは分かったから、追い出したりはしないから、そんなに焦らないで。ゆっくり行こう?私にも心の整理をさせて、ね?」 アメは少し考える素振りをし怪しんで私を見た。 「ほんとに追い出さない?」 警戒してる猫の様だ。 「心の整理が付くまでは追い出さない。ココちゃんが証人だよ。だからそれまではゆっくりね。」 「あけちゃんがそこまで言うなら僕は待つ。でも教えて。僕はあけちゃんを女性として好きだ。あけちゃんは?僕はまだ家族の 好き?」 真剣な眼差しは変わらない。 「それも含めて整理するんだよ。大丈夫。嫌いになんてならないから。」 さて、、、いよいよ逃げ場がなくなってきた。 そろそろケジメをつけなきゃな、、、
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