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撮りたての写真を、カメラの背面モニターで確認する。今のオフショットはさておき、インタビューを受ける真寛の様子はイメージどおりの一枚に仕上がっていた。被写体である真寛を画面中央からやや左寄りに据え、インタビュアーである美弥の視点として、美弥の肩越しに撮影した。狙いどおり、教室の照明と窓から差し込む光の加減をうまくとらえ、真寛の表情がより明るく見えるような写真になった。上出来だ。
最近、少しずつだけれど、写真がうまくなってきたと実感できる機会が増えていた。今の真寛の写真のように、特に光の加減をとらえるコツのようなものがわかり始めたような気がしていて、写真を撮る楽しさ、おもしろさがより強く感じられるようになった。
中学三年生の時にやめたピアノの代わりに始めた趣味は、今ではすっかり透子の日常の一部になりつつある。毎日必ず、一枚は写真を撮るようになった。そうしなければなんとなく落ちつかなかった。ピアノをやっていたときと同じだ。
そういう意味では、写真に打ち込む今は中学生の頃までの生活とあまり変わらない。熱中する対象がピアノから写真に移っただけ。なにかにのめり込む力は失われないんだなぁと、透子は少し遠い目をして自らの撮影した写真を眺めた。
どのくらいの間そうしていたのか、不意に右肩をたたかれた。驚いて顔を向けると、美弥が怪訝そうに透子を見ていた。
「聞いてる、透子ちゃん?」
「あ」
しまった、と思った時にはいつも手遅れだ。今みたいに思考に没頭していたりすると、透子はよく他人からの呼びかけを聞き逃してしまう。
「ごめんなさい、なんでした?」
「集合写真、撮りたいんだけど」
「あぁ、はい。了解です」
美弥の指示をようやく受け取った透子は、「では皆さん、こちらへ」と生徒会室に集まっていた執行役員の面々を集合させた。真寛を中心に、六人の生徒会執行部員を横並びに立たせ、距離を取る。
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