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 美弥が欲しがったのだから、この集合写真は今回発行される生徒会特別号に使われるだろう。全身写真にするか、顔が大きく映るようにバストアップショットにするか、悩んだ。 「すいません、二枚撮らせてください」  いつもこうして、悩んだときにはどちらの構図も試してみることにしていた。やや緑がかったブルーのブレザーに白いシャツ、女子はえんじ色のリボン、男子は同色のネクタイを締め、パンツやスカートはブルーグレー。名璋高校の正装に身を包んだ生徒会の面々は嫌な顔一つせず、透子の指示に従ってくれた。  まずは全身写真を一枚。撮られることを意識しすぎてみんな表情が硬いが、透子は「オッケーです」と前向きな声をかける。 「もう一枚、アップで撮るのでヘン顔くださーい」 「ヘン顔?」  役員の一人が目を丸くしてつぶやく。他の五人もクスクスと照れたように笑う。  この瞬間を待っていた。みんなの自然な笑みがこぼれ落ちる瞬間。  少しだけ被写体との距離を詰め、構図を変える。六人のバストショットを横いっぱいに収めていく。透子もみんなと一緒になって笑いながら、何度か続けてシャッターを切った。役員の誰かは本当にヘン顔をして、別の誰かはそれを見て大きく笑う。笑い声ごと写真に収めてしまいたいくらい、和やかでいい雰囲気だった。 「はい、オッケーです。ありがとうございました」  カメラを下ろした透子から声がかかると、生徒会の面々からもそれぞれ「ありがとうございました」と返ってきた。緩んだ空気がゆったりと流れる生徒会室で、カメラの背面モニターで撮りたてホヤホヤの写真をチェックしていると、美弥が透子の背後から同じ画面を覗き込んできた。
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