炭酸水がふきだすように

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炭酸水がふきだすように

 プラネタリウムから、帰ってきた。  ホオヅキの手作りというレモンソーダで一息ついてから、ソファで読みかけだった読書感想文の本を読む。  十匹の猫が、無人島に迷い込んでしまい、これから生きるためにはどうすればいいのか、と言うのをやさしい文体で描いていく内容の本だ。  キッチンでは、ホオヅキが今日の夕食を作ってくれている。  トントントン、と包丁の影をあやつって、野菜を切っている音がする。  生きるため、か。  ちょっと重い内容の本、選んじゃったかな。  でも、感想文を書かなきゃいけないし、しっかり読みこまないと。  しばらくして、ようやく最後のページまで読み終えることができた。  国語の成績は、体育と図工の次にいいとはいえ、読書感想文には毎年、苦しめられる。  さて。何から、どう書けばいいかなあ。 「ご飯ができましたよ。宿題はいったん、休憩しましょう」 「はあい」  テーブルの上に、次々と今日の晩ごはんが並んでいく。 「今日は麦ごはん、サバの照り焼き、豆腐とナスのみそ汁、ミニトマトの甘酢漬け、ゆがいたトウモロコシですよ。トウモロコシは食べやすいように、三等分にしておきました。デザートにスイカのゼリーもありますよ。今、冷蔵庫で冷やしていますから、先に食べていてください」 「うん。それじゃあ、いただきます」  ホオヅキのご飯は、今日もおいしい。  ぱくぱくと食べていると、なぜかさっきの本の内容が、フッと頭をよぎった。  十匹の猫が、無人島に迷い込んでしまうお話。  無人島で生きぬくためにはどうすればいいのか、と猫たちは悩み続けていた。  猫は眠ることと、遊ぶことが大好きだ。  一匹の猫が言った。——毛布がない。あれがないと、心が不安になるよ。  一匹の猫が言った。——ボールがない。ストレスがたまるばかりだ。  一匹の猫が言った。——猫じゃらしがない。毎日がつまらなくなる。  すると、一匹の黒猫が言った。  みんなで、ごはんを食べよう。  ごはんを食べれば、つらい気持ちもなくなるはずだよ。  だってさ、ごはんはね、すごいんだから。  何だか、ホオヅキみたいなことを言うキャラクターだな、と思った。  この間、オバケ屋敷から帰って来たあと、ご飯を食べる気力がないと言ったら、こんなことを叫んでいたっけ。 『ご飯を食べれば、ゼッタイに元気が出るんです。ボクが、元気の出るご飯をすぐに作って来てあげますから、待っていてくださいね!』  ホオヅキはご飯に対して、すごくこだわりが強い感じがする。  何か、そうなった理由でもあるのかな。  ホオヅキが、グラスに入ったスイカのゼリーを持ってきた。 「おいしそう」 「スイカの種は、チョコレートチップですよ」  デザートもすごい。手間が、かかってるんだろうな。  毎日、本当に——。 「——ありがとう、ホオヅキ」
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