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私は恐る恐る、辺りを見渡す。
幸い、周りには人があらず、ホッと胸をなでおろす。
また幽霊と会話してたのかな、この影人間はっ。
「ふんふん、なるほど。〝あの場所〟の〝あの方〟が広い見聞をお持ちなのですね。わかりました。ご協力、感謝いたします!」
高い位置にあるホオヅキの顔を、そろりそろりと見上げる。
すると、ホオヅキはニンマリと口を弓なりにゆがめた。
「教えていただきました。エポさんの、影の場所」
「だっ、誰に……? また、オバケ?」
「いいえ?」
「じゃあ」
「砂ですよ。この、星の砂」
「星の、砂?」
私は、近くの棚に規則正しく並んだ、小さなビンをのぞきこんだ。
赤や青、黄色の鮮やかな色の砂に真っ白な星形の小さな砂が混じった、とてもキレイな定番のお土産。
オバケ以外に砂とも喋れるなんて、便利な影だなあ。
「おやおや! ボクのお役立ち具合に胸が熱くなってきたようですね、エポさん!」
舞台の役者さんみたいにハデな動きで語る、ホオヅキ。
「ボクは、影ですから。人が人と会話できるように、ボクは影と会話が出来る。モチロン、オバケともね。オバケは、肉体のなくなった影のようなモノですから」
なるほど。
影はみんな、ホオヅキの仲間ってことなのね。
「つまり、この世の全てがエポさんの協力者だと言えましょう」
この世の、全てが——?
「いや、それってホオヅキがいるからこそじゃん」
「当然です! ボクはエポさんのお手伝いさんですからね!」
「まあ、ありがたいけどさ」
「そうでしょう、そうでしょう!」
ホオヅキはとっても嬉しそうに、ニンマリと口を半月にする。
影のくせに、やたら表情豊かなんだからなあ。
「でもそういうのって、誰に聞けばいいんだろう。やっぱり、オバケ?」
「長い間その場所にいて、かつ人間との触れ合いが多くあるものに頼れば、情報が集まりやすいかと」
「さっきはなんで星の砂に聞いてたの」
「砂っていうのはおしゃべりですからね。化石と違って」
「そういうものなんだ……」
まあオバケに情報を聞くよりは、砂に聞いてくれたほうがこっちもありがたい。
せっかく情報を教えてくれるオバケに対して、こっちがビクビクしてるのもなんだか申し訳ないしね。
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