炭酸水がふきだすように

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 それを聞いたホオヅキは驚いたように、ポカン、と動かなくなった。  そしてすぐに、とても嬉しそうに「はいっ」と笑った。  スイカゼリーのグラスが、私の前に置かれる。  さっきのことは頭のすみに、寄せることにした。  また後で、ゆっくり考えよう。  今は、ホオヅキのご飯をしっかりと味わわないとね。  読書感想文に苦しめられてる。  ホオヅキも、手伝ってくれてはいるけれど。  どうも、ホオヅキも読書感想文が苦手みたいなんだよね。 「ウーン。このときの主人公の猫の気持ちをなんかこう……くわしく書いて、エポさんが思ったことを書けばいいんじゃないですか?」 「でもそれじゃあ、原稿用紙三枚も書けないよ」 「じゃあ、最初から物語のあらすじを順番に書いていって最後に今言ったやつを」 「それじゃあ、三枚で足りないよ。けっこう長いもん、お話」 「難しいですねえ」  ウウーンと、うなるホオヅキ。  私はその時、ふと思ったことを聞いてみた。 「ホオヅキ、本って読んだことあるの? 影なのに」 「いやあ、ボクは本よりもマンガ派なので」 「マンガ? 影なのに」 「影でも、マンガくらい読みますよ。時間は、いくらでもありましたから」  ホオヅキは敬語で話すから、小説とか難しそうな本を読んでるのかなって、勝手にイメージしていた。 「何を読んだことがあるの?」 「なんでも読んでますよ。『でじたるカブキ』に、『ねこみといぬ』。特に最近のボクのお気に入りは、『酪農王建造せよ』。とても胸が熱くなる作品でしたねえ」  すごい。  流行った漫画、全部読んでるじゃん。  なのに電車とかには乗ったことがないんだ。  インドア派なのかな?
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