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おしゃべりな月
——それにしても、この影、よく喋るな。
私は、口下手だ。
なので、目の前にいる、お喋りな〝人でないもの〟に対して、どう接していいのか、わからない。
ずいぶんな時間、異常なモノに話しかけられたりしていたので、緊張やらなんやらで、スッカリのどが乾いてしまった。
冷蔵庫をあけ、飲み物を探す。
ドアの棚に入っていた、麦茶を取り出し、ガラスのコップに注いでいく。
すると影が、パタパタと右手らしき細い影をふり、ふらふらと揺れた。
「エポさん。ボクは【影】なので、おかまいは結構ですよ。麦茶などは、飲みませんので」
「はあ」
「しかし……麦茶とは、夏を感じます。夏と言えば、麦茶ですよね! 麦茶は緑茶やほうじ茶よりも、利尿作用が少ないのです。カリウムという成分により、余計な水分のみを体内から排出してくれるんですって。だから、夏は麦茶なんです。だから! 麦茶は! ザ・夏の飲み物なんです!」
「へえ……」
ムダにテンション高く語る影に私は適当に返事をし、飲み干したコップをシンクに置いた。
「では、エポさん。さっそくですが」
まだ、影に話しかけられるのに慣れない私は、肩をビクリを震わせた。
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