僕たちの課題

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 そしてつぎの水曜日。 「町井、課題はできた?」授業に行くと梅木が聞いてくる。 「今回は無理。やめとこうと思う」一度芽生えたサボり癖はしっかりと根を張っていた。「梅木は?」これまで張り合ってきただけに彼の動向もまだ気になっていた。 「じつは俺もやってない。てか、たぶん出さない」梅木がきっぱり言った。 「そっか、梅木も出さないのか」  その言葉に僕はますますホッとする。救われた気になる。 「いやだってさ、出席してりゃあ単位がもらえるんだぜ。課題は出せるときに出せばいいじゃん。あんま気にするなって」梅木が笑い飛ばした。あれほど提出に命を懸けていたのに。 「そうだよな。いや、おまえの言うとおりだわ」  お互いになぐさめあって僕たちは生きている。いまこの瞬間、講義のときしか付きあいがなかった梅木との関係が、いきなり昇格して「心の友よ」と叫びだしたくなるぐらい濃い関係になったように思えた。友情すら芽生えたような気がする。  こういうのなんて言ったかな、ふとよぎる。同じ穴のなんとか。いい意味か、悪い意味なのか、よくわからないけど。僕たちは似ていると思った。
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