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つぎの水曜日。
「梅木、先週の課題できた?」僕は席につくなり、すでに教科書とノートを広げ、講義を聞く体勢になっていた梅木に声をかける。やっぱり彼のことが気になる。
「まだだよ。今週はバイトが忙しくてそれどころじゃないんだ」
居酒屋でアルバイトをしている梅木はここ最近忙しい。とても課題に手が回らないらしい。もしかすると間に合わないかもとまでいう。
「ま、いいじゃん。出さなくたって単位はもらえるわけだから。無理はしないほうがいいよ」
そろそろ僕は課題の提出がめんどうになっていた。先に梅木があきらめてくれたら、僕も踏ん切りがつくというもの。そういう思惑もあり、僕はあくまで梅木のことを思っている風を装い、水を向けた。
「死んでも出す!」梅木がきっぱり言った。
「え? なんで?」
水を向けたつもりが、むしろ火をつけた?
「俺さ、おまえが真剣に課題に取り組む姿を見てたら、やめられなくなったんだよね」
「いや、それは……」
それは違うぞ、と声を大にして言いたいのをぐっとこらえる。唇がぴくぴく震えた。
僕はむかしからハマると夢中になるけど、時間が経つと飽きっぽくなるところがあった。自分でもわかっているけど、この現象が芽生えるとどうにも止まらない。いわゆるサボり癖というやつだ。これは僕の克服できない課題でもある。
「おまえ、今度の課題も出すんだろ」
梅木が確認するように僕の瞳を覗き込む。
「う、うん。たぶん」
こんなやり取りをしてしまったらやらないわけにはいかない。
僕はしぼみかけていたヤル気に火をつけようと腹筋に力を入れてみた。あまり効果はなかった。頭の中で『やめときゃいいのに』と冷たい声が聞こえた。
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