レンタル屋『冒険の味方』

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 喉から手が出るほどなりたかった憧れの勇者になれるなんて、こんなにいい話はないと思った。 「レンタルさせてください!」  普段は前に出ない物静かなラルドが身を乗り出して声を出した。 「僕も初心者魔法使いから変われますか?」 「大賢者の称号はどうでしょうか。全ての魔法が使えますよ」 「大賢者!? 魔法使いの最高位になれるなんて、夢のようです。ぜひお願いします!」  じいさんが店の奥から勇者、大賢者と刻印された鉄の兜を持ってきた。二人とも兜を被った。その瞬間、二人の体に稲妻が走り抜けた。  俺は筋骨隆々の体になり、全身の細胞に聖なる力が宿るのを感じた。ラルドを見ると、別人のように威光を纏っていて、魔力が溢れているようだ。 「お二人とも、これならどんな武器でも防具でも杖でも装備できますよ」 「じゃあ俺はこの勇者の剣と盾で」 「僕は漆黒のローブと雪結晶のついた杖をお願いします」 「レンタルして頂いて、ありがとうございます」  それから俺達は快進撃を続けて、魔王の元までやってきた。遭遇した無数の敵は剣を一振りするだけで倒せた。  口から炎を吐く不気味な紫色の巨体の魔王が動くと地響きが起こった。俺達は大きな口を開けている魔王と対峙した。 「よくぞ、ここまで来たな。我の刃に全力で向かってくるがいい!」  魔王が炎を吐きながら距離を詰めてきた。巨大な両腕を交差させると激しい竜巻が起こった。
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