5人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
俺とラルドは自分の身を庇いながら前に進んだ。
「さすがは魔王だ。規格外の強さだ」
「僕が魔法で援護するから、君はその隙に魔王に攻撃して」
「わかった。行くぞ、ラルド!」
「任せておけ、キラ!」
ラルドが竜巻を弱体化させる魔法を放つと、俺は魔王の懐に入り、剣を振り上げ突き立てようとした。
その時だった。煙が辺り一面を覆うと、持っていたはずの剣や盾が消滅して、体は以前の駆け出し冒険者の弱々しい体になった。
ラルドの方を見ると、大賢者の風格は微塵もなく、どこにでもいそうな初心者魔法使いに戻っていた。
遠くから声がするので、顔を向けるとレンタル店の店主だった。じいさんが満面の笑顔だった。
「お客様、レンタル返却時刻です」
「一番大事な所で、あとちょっとなのに」
「時間は時間です」
「冒険の味方じゃなかったのですか?」
じいさんがさらに嬉しそうに声を出して笑っていた。
「味方はいつか裏切る者です。世知辛い世界を生きることこそ冒険の醍醐味です」
最初のコメントを投稿しよう!