芽生えふりかけ

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薄暗い研究室。 机の上は本が山積み、床には空き缶が入ったゴミ袋が沢山置いてある。 メバ博士は太陽の光を浴びることが大嫌いで、日中は外へ一歩も出ない。 逆に夜は好きなのに夜道を一人で歩くのは怖くて、助手と一緒に買い物へ行くぐらいしかしていない。 研究室で寝泊まりすることが多く、メバ博士の第二の家となっているのだ。 メバ博士は、二日間睡眠と食事をとらずに芽生えふりかけを発明した。 試しに調理器具と冷蔵庫にふりかけると、小さい芽が生えた。 「発明に夢中で二日間何も食べてないんだ。何か作ってくれ」 メバ博士は話しかけたが、作ってくれる気配がない。 「やだね。いつも扱いが荒いし、ちゃんと洗ってくれないから」 持ち手に芽が生えたフライパンが、跳ねながら訴えてきた。 「そうだそうだ。まずこの味噌汁を飲め!」 蓋に芽が生えた鍋が、蓋を揺らしながら訴える。 中に入っている昨日の残りの味噌汁がこぼれそうだ。 「新しい食材を入れる前に、ちゃんと使い切りなさいよね!」 ドアに芽が生えた冷蔵庫が、ドアを開け閉めしながら訴える。 料理を出してくれるどころか、出るのはメバ博士に対する日頃の鬱憤ばかり。 メバ博士は、調理器具と冷蔵庫に生えた芽を抜いた。 「んー、失敗か」 メバ博士は、大人しくなった冷蔵庫から食材を取り出し、調理器具に謝りながら料理を始めた。
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