小さな命

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 今日も泥だらけだ。毎日いったいどこでどうやって遊んでいるのだろう。  小学校へ上がった途端、幼稚園の時よりも当然ながら行動範囲が広がった。毎日学校を終えた後はランドセルを放り出し、一目散に外へと走り出してしまう。  家にこもりっ放しよりかはいいか、と自分を納得させ、落ちにくい泥汚れと格闘する。これが毎日の日課になっている。 「ただいまぁ!」  今日も元気よく帰って来た息子の笑顔と、泥だらけの服。服と同じように泥んこになった握りこぶしを、ずいと私の方へ向けた。 「なぁに?」 「これ!」  開かれた小さな手の平の上には、小さな種。好奇心いっぱいの息子の顔に、笑みがこぼれる。いったい何の種だろうか。分からないけれど、小さなその種を小さな手の平に握りしめて、胸に期待いっぱい詰め込んで帰って来た息子が愛おしい。  ベランダの小さな鉢植えに、息子と一緒にその種を植えた。数日後にはきっと小さな芽を出すだろう。どんな花が咲くのか分からないけれど、きっとどんな花が咲いたって嬉しいに違いない。
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