ショコラ  理想的な家族4ー良子

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 自国の人間と外国の人間が人質にとられたその国は、こんな情勢下で呑気にパーティを開いた外国人に冷淡だった。テロリストは恐らく外国人を標的にしたのだろう。自国の人間が殺される可能性は低い。  だが、その外国人の本国は、彼らにとって重要な国だったし、無下にするわけにもいかない。  犯人との交渉より、二ヵ国の協議の方が長引きそうだと踏んだ組織は、自分たちが手を出すことにした。国同士の妥協を待っていたら、手遅れになる。  結果的には作戦は成功した。人質は全員無事。実行犯五名の身柄を確保、三名を射殺。  両国ともテロに屈することなく、人質の身を守ったとして、大々的にニュースになった。  二つの国は、事件が起こった当初は険悪になりかけたことなど、なかったかのように、お互いを称え合った。  わたしも作戦に参加した。  主に人質をフォローする役割だったが、敵を撃つことに躊躇はなかった。三名の射殺はわたしの仕事ではなかったが、それはたまたまだ。  彼らは自爆する用意があった。体に巻き付けていた爆弾を躊躇なく起爆させようとした彼らを止めるのに、猶予も選択肢もなかった。  実際、狙撃した我々の味方の腕が少しでも劣っていたら、人質も我々も犠牲は避けられなかった。  ただ……  そのうちの一人に見覚えがあっただけだ。
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