萌す相手

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萌す相手

小さくて、えもいえぬ美しさだった。 柔らかさはないが、枯れてしまって、崩れる心配はない。 花でも、植物でもない。 それは、永遠に変わらないもの。 ガラスの薔薇は三つ。 その一つは、正妃となる乙女。 あと二つは、王の心次第。 王が成人の儀に薔薇が舞う。 王妃候補が選ばれる。 ガラスの薔薇が、正統なる王の運命の相手を導く。 煌めく王宮の、すべての憧憬。 王の心の鍵を開ける。 眩いばかりの道標。 愛と命。 心も魂もひっくるめて、王のすべての切り札。 互いのためには創られ、二人は結びつく。 初めて、完璧に一つになる運命。 ただ快楽のためばかりではない。 二人は、離れ離れに生きることは、堪え切れない。 別々の道を歩むこと。 太陽も水もない地で、息絶えるのと同じくらいに。 お互いを愛し合えるから。 二人の愛から生まれる新しい命。 共に育みたいと、互いに心底願っているから。 王の心に萌す相手。 正妃以外選ばれることはない。 他の候補者も断固必要としない。 王の唯一無二の伴侶となる可能性もある。 〜ガラスの薔薇が鮮烈に瞬く。 高貴な紫色に染め上げ香り出す時。 その瞬間、互いの鼓動、否応なく跳ね上がる〜
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