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1.性転換
俺は柊 博。株式会社吉田建設の社員である。
今日、俺は上司にクビにされ、途方に暮れながら帰路に就いていた。
「ん?」
空き地だった場所に、見覚えのない店が建っている。
俺はその店へ入ってみた。
「いらっしゃいませ」
カウンター越しに店員が挨拶をする。
「あの、ここは……?」
ショーケースの中に、女性の姿をした人形らしきものが並んでる。
「ボディショップでございます」
「ボディショップ?」
「さようでございます。そちらはサンプルになります」
訳がわからない。
「えっと、等身大の人形屋さんですか?」
「いえ、当店は義骸屋です」
「義骸屋?」
「ええ。カタログから気に入った体を選んでいただき、ご利用いただく店になっております」
「どういうことですか?」
「説明するより、実際に体験してもらった方が早いですね」
カウンターから出てくる店員。
店員は俺を店の奥へと案内し、カタログを渡してきた。
「こちらからお好きな体をお選び下さい。お試しということでお安くしときますよ」
俺はカタログを捲る。
と、一枚のイラストに目が止まる。
端正な顔立ちをした長髪の女性。
「お決まりですか?」
「ええ、まあ……」
「わかりました。では、あちらの台に横になって下さい」
店員が示した何かの機械がつけられたベッドに、俺は横になった。
キャップ型の機械が俺の頭部に被せられた。
「十秒で終わります」
装置が起動し、十秒後に停止する。
「何も変わってないように見えるけど」
「あなたの頭にちょっとした仕掛けを施させていただきました」
「はい?」
「イメージするだけで、お選びいただいた女性の姿に変身できるはずです。あちらの鏡の前に立ってやってみて下さい」
俺は鏡の前に立ち、イメージする。
と、俺の体が徐々に変化し、カタログの女性の姿になった。
「どういうこと?」
声もソプラノに変わっている。
「いて!」
胸が痛い。
「女性ですからね。ブラジャーをしないと」
「女性の機能を完全に再現されてるんですか?」
「さようでございます」
店員からブラジャーを受け取る。
俺はブラジャーをつけた。
「お試し価格で五千円です」
俺は五千円を払った。
「お客様、こちらに連絡先を記入していただけますか?」
店員が用紙とボールペンを渡してきた。
俺は連絡先を書き込み、返却した。
「柊様、そちらのお姿の名義ですが……」
「柊 聡美でお願いします」
「わかりました。では、聡美で戸籍をご用意しておきます」
俺は店を出ると、帰路に就いた。
「ただいまー」
アパートの自分の部屋に入る。
シーンとしている。
一人暮らしだから当然か。
俺はベッドに横たわった。
明日から何して過ごせばいいんだ。
そう、俺は失業をしていた。
寝るか。
俺は眠りに就いた。
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