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失われた二時間半の間を埋めるものは現状あの宇宙人の少女との記憶しかない
だが俺には二時間半というのはあまりにも長すぎるという違和感があった
夜の峠を下りながら不安を走らせる
ハンドルを握る左手と左胸の鎖骨の下の辺りをコリコリと弄る右手
こんな自分の胸を弄くるなんて癖は俺にはなかった
きっと今の俺は未知への恐怖と緊張で極度のストレス状態にあるのだろう
右手をハンドルに戻しても気づけばまた鎖骨の下をコリコリと弄くっている
そうしていると不安が和らぐのを感じるので俺は自宅のマンションにつくまで左胸をコリコリしながら車を走らせた
地下の駐車場に車を止めエレベーターに乗り七階へと向かう
その間も俺の右手は鎖骨の下をコリコリと弄る
703号室の鍵を開けドアを開き電気をつける
俺は迷わず洗面所に向かい上着を脱いだ
いくらなんでもおかしいのだ
こんな自分でも知らない病的な癖が突然現れてまるで自分の体がここだここだと指摘しているような……
鏡に映った半裸の自分を見た感想は、やはりであった
ここにたどり着くまでの間に既に脳が受け入れの準備をしていたのかもしれない
俺の左胸の鎖骨の下は僅かに赤く腫れていて、そしてそこには治りかけの小さな十字傷があった
当然こんな傷に心当たりはなく俺は確信した
やはり俺はUFOに連れ去られていてそこで宇宙人の少女と出会っていたのだ
そして俺は彼女からパートナーに選ばれたなんて説明を受けて、そして……きっと俺の知らない間に体をいじくられていた
寒気がする。もう寝よう。今はとりあえず布団に入ってすべてを忘れたい
何も考えたくないのだ
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