滅人衝動

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不安は渦を巻き動力となって思考を加速させる 望んで思考停止出来たらどんなに楽だろうか 現実は逆でむしろ思考を止めたい時ほど脳は活発に働こうとする 一睡も出来ずに朝を迎え眠気が一線を越えた カーテンの隙間から射す日光によって滅茶苦茶に戻された体内時計の針に脳が騙され、モヤモヤとした眠気が潮のように引いていく とはいえ今日が仕事のない土曜日で本当によかった もうしばらくすれば引いた眠気が津波のように押し寄せてくるのだろうから 俺は布団を出てコーヒーの粉をマグカップに入れた ポットから出る湯がポトポトと音を立てて黒く泡立っていく 物語の中の宇宙人は大体敵対的で、宇宙人は侵略者として話の通じないモンスターのようにえがかれることが多いが、現実的に考えればそんなことはないだろう 我々地球人よりも遥かに知的で洗練された文明でなければ恒星間を移動する技術など持ち得ないはずだ 実際宇宙人の少女は地球に合わせて我々の言語で、つまりは日本語でコミュニケーションを取ってきた 彼女たちにとっては言語を一つ習得することなどわけないのだろう 砂糖は入れずクリープを回すように垂らす 舌先が痺れる熱さのコーヒーをすすり息をつく 俺は逆に考えることにした 逆に考えればこの星が映画のように異形の怪物たちによって蹂躙される可能性がなくなったのでは?と 0.0001%未満であろうとこの星が話の通じない宇宙人によって侵略される可能性は存在していたように思うのだが、それが無くなったのでは? もちろん彼女たちとは別の異星人に攻め込まれる可能性が払拭されたわけではないが、地球が彼女たちの支配下にあることで他の異星人による侵略から逃れられるのではないか それって、良いことなのではないだろうか 長い夜を走りきった脳はそういう結論を導き出した 彼女はいった "この星程度の文明であれば何事にもならない"と その通りだろう。地球の文明なんてようやく火星に無人機を送り届けるレベルだ どこにいるかもわからない異星の文明に害を与えるなど物理的に不可能なのだ 俺は素直に彼女のパートナーとして勤め問題なしと判断されるその日を待てばいいのだ
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