滅人衝動

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あれから九ヶ月。部屋にはまだ宇宙人がいる 彼女は本来の目的を見失いネト麻廃人と化していた 「ウキー!クソ待ちに負けて捲られた!こっちの方が絶対に枚数圧倒的に多いのに!」 そういって彼女はマウスを動かし先ほどの戦いの牌譜を開く 「ほら見て!山8だよ!対して向こうは山1のペンチャン!てか見た目1枚でリーチするか?ラス回避意識低すぎ。上だけ見てアホじゃねーのこいつ!」 「なあ……お前いつ帰るんだよ」 「もうちょっとくらいいいじゃん!」 三ヶ月が過ぎた頃、まあ少しくらいならいいかと思った 何より麻雀というこの星の遊戯にのめり込む宇宙人を見るのは痛快でもあった だが限度がある このままだとこの宇宙人は俺が死ぬまでこの部屋で麻雀を打ち続けるのではないかという懸念が芽生えた 「そんなに面白いならお前たちの星に麻雀を持ち帰ればいいじゃないか」 「それは当然する。だけどこのままじゃ帰れない。私のランクまだシルバーだよ?こんなの運が悪いだけだって!おかしくない?理屈では私が勝つはずなんだって!とっくに高段位になってていいんだって!ただ確率がさ!運がなくてさ」 「っていっても運の片寄りは集束するっていうしな。まだシルバーってことはお前が中級者よりも下手くそってことなんじゃないか?」 「ウキー!」 彼女は光の速さでマッチング申請をし恐ろしい速さでマウスを連打する 最近はこうしてうさを晴らしている 俺たち地球人を散々見下してくれた宇宙人に名も知らぬネット雀士を利用してマウントを取るのだ だが俺は忘れていた 彼女がこの星に来た目的も 彼女の裁量も そして気付いていなかった 彼女の中にどす黒い感情が芽生えつつあったということに
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