第二章  昨日の敵は、今日も敵だ!

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 4・愛の隕石(いんせき)シャワーが、雨・アラレ!  「オイッ、若園祥子の調査書を何処に遣ったッ」  「お前が隠してるのは解ってるんだぞッ、サッサと出せ!」、大音量の蒼汰隕石が勇に直撃!勇の弱々しい言い訳が、木っ端みじんに吹っ飛んだ。  机の引き出しの奥に押し込んでおいた調査書の存在を、猟犬のように嗅ぎつけたのだ。そんな怒り狂った蒼汰の隕石シャワーを浴びてから、すでに二週間が過ぎ。  世の中はほのぼのと雛祭り・・勇の双子の娘のためにと蒼汰が買ってきた、ひな祭りのケーキが不気味だった。三色の生クリームを塗りたくったひし形のケーキの上には、雪洞と桃の花。金屏風を背おったお内裏様とお姫様が、いささか意味深に並んで座っている。  「あの時は済まなかったな」、屈託のない笑顔で詫びを言う蒼汰の魂胆が、そら恐ろしい。そんな猿芝居に騙されるほど、勇もお人好しではない。  「俺に何を頼む気だッ」、ついつい語気が荒くなった。  「うむ」、意味が解らない相づちを打った後で、勇の顔を覗き込むと信じられない様なことを言い出した。  「あの調査書が本当なら、若園祥子の身体の中にいるのは、どう考えても七重だよな」  「だったらもう一度、七重を捕縛するまでだ」と、アホ男が宣ったのだ。  「いいか、お前ッ」  「ソコのお前だよ」、蒼汰に人差し指を突き付けた。  「若園祥子は十六歳だ、判るか?」、三十七歳の男が十六歳の女子高生を(たぶら)かして関係を持つような真似をしたら、間違いなく未成年者との不純異性交游。  今はやりのパパ活だ。  祥子の中身が五十七歳の岩村七重だなどと言おうものなら、精神鑑定にかけられるのが落ち。良くて心療内科送りか、悪くすると実刑もアリだ。  「解らないようにやるさ」、だから協力しろと言うのだ。  何をする気か聞いて。「やめろ」と言いかけた口が、開いたまま塞がらなくなった。  「もう一度、言ってくれ」  「俺の聞き間違いでなければ、あの娘と婚約すると言ったのか?」、思いっ切り睨み付けてやった。  「どうやって、会ったことも無い女子高生のお嬢ちゃんと婚約するんだ」  「言えるものなら、言って見ろよ」、意地の悪い声が出た。  「まぁ、そう尖るな。婚約の前に、まず見合いをする」、もっと訳が分からないことを言い出した。  よくよく聞けば。金融界の狸オヤジ、あの影のフィクサーと悪名高い丹波吉松を賄賂で買収して、すでに仲人に立てたと言うじゃ無いか。つまり伊豆家に、祥子との見合いを申し込んだらしい。
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