第二章  昨日の敵は、今日も敵だ!

45/64
前へ
/147ページ
次へ
 「しかし・・その様な行動は如何なものかと・・」、必死の教頭先生の援護射撃も、五島氏が呼び寄せた顧問弁護士の一言でひっくり返った。  「アザレア自由学園と言えば、名門校ですゾ。後妻業だなどと噂される不純な生徒を、野放しになされるのですか」  「もしもこの話を、マスコミが嗅ぎ付けたらどうなされる」  どう保護者会に説明するのかと、コーナーに追い詰めた。後を付けて、もしも室蘭優姫の嫌疑が晴れるなら、それに越したことは無いと力説したのだ。  呆気なく、校長先生サイドの敗北が決まった。仕方なく同意はしたものの。  「良いのかねぇ、僕は生徒を信じるべきだと思うんだがねぇ・・」、教頭先生に愚痴ったのである。教頭先生も同意見だが、いままで校長室の強力な後ろ盾だった保護者会会長の福島氏が退いた今、強力な援護射撃は期待できない。  「伊達さんではなぁ」、通称・お公家さんには、五島派の討伐など荷が重い。  嫌々ながら、放課後の校門の前でお迎えの車に乗り込む室蘭優姫を確認すると。密かに五島氏が用意した車に、五島派の面々と一緒に乗り込んだ。  街の中を走り抜けていくロールスロイスの後を追って走る五島氏の車。一時間以上も追跡を続行しで、件のロールスロイスは物々しい黒鉄の門の前で一旦停車した。  重々しい音を響かせて門扉が開くのを待って、ロールスロイスは門の中に消えたのだが。車が通ってすぐに、門扉はまた重々しい音を響かせて閉じてしまったのである。  「追跡はココまでですかなぁ」、助手席に座った弁護士が呟いた。  「想像していたものと違いすぎますわ」、相模女史も言葉を探しているらしい。  「何と言いますか、ラブホテルの進化系ではありませんかな。現実離れした場所だ」、江戸川医師が現実的な見解を述べる。  「あそこにインターフォンが見えますよ、社長」、運転手が指さす場所を見た一同の意見が、初めて一致した。  弁護士と五島氏が降りていくと、インターフォンのスイッチを押す。  「あなた方は、ドン・フィエコ家が所有する私有地に入り込んでいる。警告する、直ぐに退去しなさい」  インターフォンから、機械的な複合音声が聞こえてきた。  「我々はアザレア自由学園の保護者会だ。室蘭優姫への面会を求める」、警告に負けることなく、弁護士が言い返した。  しばらく無音が続いた後で。  「身分を証明するものをお持ちですか?」今度は上品な男性の肉声が聞こえてきた。  「お持ちなら、カメラに向かってご提示ください。確認を取りましょう」  そこでしぶしぶ校長先生も門の側に歩み寄ると、身分証を取り出してカメラに向かって掲げて見せた。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加