第二章  昨日の敵は、今日も敵だ!

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 巻き添えを喰らった校長先生と、室蘭優姫を糾弾する気が満々の五島氏と江戸川医師を乗せたロールスロイスは、ゆるゆると屋敷に続く道を進んでいく。  突然に頂上付近に出たと思ったら、あり得ない様な華麗な庭園が広がった。庭園の向こうにはヘリポートと格納庫、超がつくほど大っきな車庫らしき建物が並ぶ。  「これは、何ですかな?・・」、江戸川医師が言葉を失った。想像もして居なかったモノを見た時の、普通人特有の反応だ。  「ウ~ム」、五島氏がうなった。  三日前のことだ。室蘭優姫の後妻業疑惑を確実なものにする為に、そしてまた前会長の落ち度を公にする為にも。学校に届けられている室蘭優姫の現住所に、五島氏と江戸川医師の二人は取り敢えず、一度は行って見た。  それは丘の上に広がる超高級住宅街の、一等地に建つ一番大きなお屋敷だった。表札も確認済み。表札に書かれた【椎名】という名前も、届け出にある通りだった。  さっそく調査会社に、その椎名なる人物の調査を依頼。翌日に届いた調査書を、二人でむさぼり読んだ。  フルネームは、アントン、雅之・スミス・椎名と長ったらしい。日系二世のアメリカ人のようだ。年齢は六十八歳とソコソコに高齢。三年前に妻と死別、妻との間に出来た二人の子供はすでに結婚して独立している。  いまは独身、外資系企業の支社長を務めている人物で、年収が六千万円ほどと、後妻業のオンナが狙うには手頃。  だから。後妻業の罪で室蘭優姫を糾弾するつもりで、彼女が乗り込んだ車を追跡してきたのだが、何やら向う先が違うような。  「ドン・フィエコ家と言うのは、一体なんだろうね?」、江戸川医師が聞いてきた。  「解らんが、どうも普通の家じゃないようだな。そう言えば、イタリアン・マフィアが出て来る映画があっただろう」  江戸川医師が大きく頷く。  「確かコッポラ監督が撮った、【ゴットファザー】とか言う映画じゃ無かったかな。ドン・コルレオーネと言うボスが出てくる、アメリカのヤクザ映画だよ」、五島氏がまた、ポンと膝を打った。  「ドン・フィエコねぇ。もしかしたらここも、マフィアが日本に作ったアジトかも知れんぞ」、江戸川医師がブルッと身震いする。  そんな保護者会の重鎮たちの遣り取りを片耳で聞きながら、校長先生は前会長の言葉を思い出していた。
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