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「ん?」
「……あ、いや、すみません。何でもないです」
目の前でにこにこしながらおばちゃんの持って来てくれたお絞りで手を拭いているイケオジに平静を装い小声で謝りながらも、速攻でそのキャラを保護する。そしてこういう時のために取っておいた強化アイテムをここぞとばかりに食わせる。
食わせながら、目の前のイケオジをこっそり観察した。
ここに集うのは大体が普通のサラリーマンやガテン系のおじちゃん、兄ちゃんたちばかりで。
彼はどう考えてもこんな大衆食堂には全く似つかわしくない風貌で(おばちゃん、ごめん)、言っちゃ悪いけどめちゃくちゃ浮いている。
ここに居合わせているお客さんたちも、案の定物珍しげにちらちらと彼の方に視線を送っていた。
でもそんな視線を気にする風でもなく壁に貼られているメニューを眺めている彼をチラ見しながら、私は早速そのSSRのキャラを手持ちに加えてお昼の限定クエストに出発しようとした、のに。
「実は僕は今日ここに初めて来たんだけど、君はひょっとして常連さんかな?」
あろうことか目の前のイケオジがにこにこしながら私に話しかけて来る。
「……はい、そうですケド……」
戸惑いながらもそう答えればより一層顔を綻ばせてグイ、と身を乗り出して来たイケオジに、こちらは若干身を引く。
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